前の日記でも書いたと思うけど、わしはこう見えてPK志望だ。

「なぜPKをするのか」、その理由について書いておきたいと思う。


結論から言ってしまえば

になる。


わしは人を斬るのが好きなんじゃない。
人から物を奪って、美味しい思いをするのが好きなのだ。

「どう違うの？」と言われれば、損してまでPKをするか、損をするならPKをしないか、ぐらい違う。
わしは後者だ。損をするならPKをしない。だから今はPKをせず、ひたすら情報収集に徹している。


こーいう態度が、同業者さんからチキン野郎とか日和見とか言われてるけど、
わし的には全ッ然オッケーだ。むしろ褒め言葉だと思っている。

「こういう勝負事は臆病なぐらいでちょうどいい」というのがわしの持論だ。

どの世界でもそうだけど、勝者こそ英雄であり、敗者は豚だ。

勝者になり続ける算段なくしては、英雄であり続けることは出来ないと思っている。
だからその算段が見つかるまでは、わしは様子を見続ける。

わしは英雄であり続けたいんだ。もう二度と豚になりたくない。
そう……もう二度と……

わしは、この世界に来る前は、いわゆる"ニート"と呼ばれる職業についていた。
はっきりいって敗者だった。豚であった。惨めであった。
そしてそこから抜け出すことの難しさを身を持って知っている。

人間、一度敗者側に回ると、魂が下落するのだ。

自分一人の力でそこから抜け出すのは不可能となり、
天の助けか、人の助けを借りなくては脱出できなくなる。
それぐらい、敗者であることの、心の負担は大きいのだ。

だからこの世界に来た時は心が踊った。
なんせたって、肉体の能力差はなくなり、エンブリオが強さを決める世界となったのだ。
わしみたいなニートでも、戦闘経験を詰んだ者達と対応と戦うことができる。

マイナス一直線だったわしの人生は、この世界のお陰で一気に０にまで戻された。
まさに、天の助け、というやつだろう。わしはズブズブだった敗者生活から、ようやく脱出することが出来た。

もうマイナスに戻りたくはない。あんなネガティブな状態は二度とゴメンだ。少しでもマイナスから遠ざかりたい。少しでもプラスに、あわよくば誰よりもプラスに。
そのためにはどんなことだってする、例えば、人から物を奪うことでも……。
わしがPKを志す本当の理由は、そんなところだと思う。

とても何か言いたそうな視線を、ただ平伏する社長に向けていたが、
やがて、小さくため息をついた。

そういうと踵を返し、カウンターの奥の方に戻っていった。

部屋へと戻る社長を見つめ……
ただ一言、ポツリと呟いた。