“じゃらり”

“全ての過去がある島”に死後も存在を囚われ使役される少女。いや、その形をしたシステム。
それはこのメルンテーゼで出逢った青年の生み出した“鎖”によって変質した。

歪んだ存在となった少女はしかし疑問無く戦い続ける。これまでの様に。
しかし其処に苦悩も絶望も諦観も無かった。これまでと違って。

そして少女の謳うリズムにひとつの詩が刻まれた。

それは自らの尾を噛む蛇の詩。
それは蛇に絡みつく鎖の詩。
その詩は奇怪な無限を謳った。

“じゃらり”

新たなリズムは少女を戦いへと駆り立てる。
喜びを持ってただひたすら一揆を為す為に。

その先にある何かでは無く、“槍を突き立てる”その事のみを目的として。

男は少女の変化に不審そうな視線を投げかけた。

違和感に縛り付けられた微笑みに訝しむ表情を見せる。

「決して対等の関係ではないでしょうけれど」とぽつりと呟いた。

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　静かに笑って、右手に魔術力場を形成した。