炎の力に久方ぶりに触れる。
私が冒険者となる直前、言わば最初に触れた埒外の力も、それだ。
以降、慣れ親しんだものだ。
——無論、最初の頃は怖気づきつつ、だったが。

しかしそれも、随分昔の話だ。
今となっては、炎の力に頼らぬ戦いをした期間のほうが圧倒的に長い。
銃も使った、剣も手に取った。罠に薬品も。
・・・魔術的素養が多少有ったことについては、どの世界でも感謝した。

ただ、炎の力については。
他のモノが便利だったから、その時有用なものだったから、と言うのは確かに有る。
しかし結局の所、最初に使ったものとは別のそれを使うのを、忌避していたのだろう。
少し、笑えるものだ。
まるで初めて貰った贈り物を、後生大事にしている独身者のようだ。


だが、事此処に至ればそう言う訳にも行かない。
貪欲で在らねばならない。

力を呼び覚ますための力。
それこそ、今私の求めるべきもの。

闘技会

—冷静さを身に付けるに至った経緯には、
相当の労苦があったとは容易に思い当たるが、あえてそこには触れない。
にこやかな表情で手を伸ばす。……避けるか何か対応を取らない限り頭を撫でられる事は必至だ！

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　ふっと笑って、緋色の力場を手に取った。

怪しい姿をした人が立っている