傷つくことには慣れている。
それが肉の身体のものでも、そうでなくとも。
けれど、誰かに心配されることには、未だに慣れない。

怪我をしたのは私だけなのに、私よりも酷く辛そうな顔をするひとたち。

わかっている。
私もきっと、あのひとたちが傷つけば辛い。もう、そのくらいには近づいてしまった。
なのにどうしても、自分がそう思われているとは納得できないままだ。

誰かの心の一部に、私がいる。 どうして？ 私には、そんな価値なんてない。

角のない右の額と、霞みの残る右の目をてのひらで覆って立ち尽くす。
滑らかな額の、この欠落。 失われたまま生まれ、施しを啜って長らえたこの、この穢らわしい身体。
私を貴いというひとの、その言葉の痛みこそが突き刺さる。
許されるべくもない。 どうして赦されよう。 かあさんはもう戻らない。
償うすべさえもはやない。 私はすでに、故郷への帰路を知らない。 戻れない。

かあさんは今の私をどう思うだろう。
あの哀しげな横顔。 今ならその諦めの深さがわかる。
手を伸ばすこともできない、たすけを求められる相手も、身を守るすべもない。
進めば進むだけぼろぼろに傷ついていくことが目に見えていながら、それでも先以外の何もない。

自ら定めた道ですらなくとも、足を止めればもう、そこで朽ちるのを待つだけだ。
どこにも辿りつけなくても、まだ、此処では。

だってまだ歩ける。
何も失くしていない。 失くしていたところで、気づきもしない。
私には、欠けていたものが多すぎる。

だいじょうぶと言葉にするのは、嘘にしないためだ。
私はまだ、だいじょうぶ。
そうやって自分を騙すのは、昔からずっと得意だった。

だから、だいじょうぶだ。

ごそごそ。

〜〜〜　という訳で　〜〜〜

燈子は強引にプルに拉致仲間として、戦闘に駆り出された。

黄昏を宿したほのかな焔の一塊が、燈子の影から静かに滑り出た。

焔は音もなく、ほのかに瞬いている。