メンバー構成を間違えた。
わりあい深刻にそう思わずにはいられない。


黙々と水辺を進む。
会話はない。

ちらりと視線を斜め後ろを歩く二人へと向ける。
ユーグとツグミ。
今回、消去法的に水辺への同行者となった二人である。

と言っても、それほど今までに接点があったわけではない。
間接的にならば、ルクリお嬢様とツグミのじゃれ合いを制止することは何度かあったのだが。
この場にルクリお嬢様がいれば、きっと楽しげにツグミに話しかけて、それを微妙に眉根にしわを寄せるユーグが止めるでもなく見ていて、その不機嫌な空気を逸らすためにこちらがお嬢様とユーグの間に入って適当なことをあれこれ言い合う。
そんな流れの起点となるべきお嬢様がこの場にはいない。
……改めて確認して、また気が沈んできました。
お嬢様がいないと、私のやる気は８割ダウンである。

そもそも、相手（ユーグ）はどういう人物なのか。
知っている限りでは、

・ツグミが最も大事な存在。性欲としての対象ではないらしい。
・やや神経質な性格。また、執着したものへの独占欲は強い？
・外面はいいが、かなり短気であまり笑顔が続かない。
・セロと故郷が近く、その接点でたまに話している様子を見る。
・戦闘時は、投げつけたものを爆発させることで敵にダメージを与える。
・能力を使用する際に目が青く発色する。

とても表面的ではあるが、主にはこういった所か。
総括すると「大人として振舞っているが、多分に子供じみた部分も大きい人物」だろう。
私自身もお嬢様が一番であり、神経質な部分が少なからずあるので、そういった点については共感できるだろうか。

だが、それ以上に大きいのは年と性別の差か。
実年齢からいえば私の方がおそらく年上なのだが、見た目で比較すればそれはあっさり逆転するだろう。
性別は言うに及ばず。
有史以降、それこそ精神を接合でもしなければ（もしかしたら、しても）男と女が理解しあえたなどと言うことはない。
つまり、会話が成立しなくても状況的に致し方ない。


……以上、全く無意味な思考がぐるぐる頭の中で回り続ける。
それとは別に、手足は動かし、足場の悪い場所は後続へ足を置く場所を示しながら進み続ける。
今でこそお嬢様の護衛をやっているが、元より私は追跡と襲撃に長じた血統の生まれである。
こう言った斥候のような仕事は、意識しなくても本能が身体を動かしてくれるくらいには親しいものであった。


いっそのこと、襲撃の一つでもあれば間が持つのに。
そんな時に限って平和は続き、目的地に着くまでこの調子なのであった。
もうちょっと、お嬢様を抜きで他の人とのやり取りを増やすべきか、真剣に課題として考慮するべきかもしれない。

珍しく、ぶつぶつと呟いて頭の中で考えをまとめているらしい。……出口は見えないようだ。

物思いにふけっていたようで、歩みに間に合わせるべく適当なものを拾っている