配慮ということをすっかり忘れて本気でじゃれついていると、目の前が真っ白になった。

何があったのかと目をぱしぱしさせていると、エンブリオという言の葉に反応し耳をピンと立てた。

喉を撫でられ嬉しそうにしながらヒラヒラと舞う蝶に視線をやると、それに応えるかのように蝶は獣の頭の上を円を描くように舞った。
キラキラと微細な鱗粉がその羽の周りを彩りながら。

空いた手で、自らの肩を抱くようにして。

ぶらんぶらんと揺れながら、そんなことを言った。

「本当によかったですわ！」 と、邪気のない笑顔を浮かべて手を握るあなた、
しかし男はその行為に ほんの一瞬、表情を歪めた。
…が、次の瞬間には再び笑顔に戻り、ごくごく自然にするりとその手を引き抜く。

そうして暫しあなたの言葉に頷いたり、相槌を打ったりしていたが、
（——「人様にご迷惑をかけるようなことは一度もしたことがありませんのよ」
という台詞の時にだけは、片眉を上げて何やら言いたそうな顔をしていたが、——）
あなたが差し出した洗濯済みの服が それは見事に洗い上げられているのを認めると
そこでようやく身に纏う空気を少しだけ和らげた。

その言葉に対し、少女は何らかの反応を返したろうか。
しかしそれは軽くいなすと、次ぐ問いかけに小首を傾げて微笑んだ。

大きく翼をはためかせ——

前回は難敵だった貝をこんと蹴る