兄は何ヶ月かに一度、家に帰ってきてはまた出かけていく。
その時には、大量の食べ物と珍しいお土産を持って来てくれる。

村では夏祭りが行われており、他所から様々なものがやってきた。
エメリーは兄に手を引かれ、村の広場に出てきた。
着ているのは、家にほとんどない上等の生地を使った服だが、
ぶかぶかの兄のお下がりだった。

南の島のダンス、手回しの大きな楽器、
そこら中で焼かれている美味しそうな料理。
年に一度しか見ることのできないそれらは、
たいへん貴重なものであった。
とりわけ、エメリーがいちばん楽しみにしていたのは古本の売り場だった。
ワゴンには多少古くて汚いが、面白そうな本がたくさん並んでいた。
兄はその中の一冊を買ってくれた。

祭の帰り、エメリーは村の同じ年頃の子どもたちの一団を見た。
彼らは楽しそうにしていた。
兄が彼らに声を掛けると、エメリーは驚いて後ろに隠れ、
そのまま逃げてしまった。
祭が終わって兄が家に帰ると、
エメリーは隅で買ってもらったばかりの本を枕にして寝ていた。
その顔には、涙の跡があった。