エメリーは、兄に最近読んだ本の内容を話した。
彼もまた小さい頃に同じ本を読んだが、
なぜか嬉しそうにしていた。
どうやら、エメリーの感想が面白かったらしい。


『狼王』

〜あらすじ〜

狼王。
人間を恐れさせた狼の国の君主。
その身体が巨大であるだけでなく、知恵もあった。
人間たちは数々の罠を仕掛けたが、それを尽く破った。
敵無しと思われた彼にはただ一つ、弱点があった。
狼の王妃。
狼王が愛してやまない、たった一人の王妃だった。
人間は彼女を捕え、狼王に再び挑んだ。
狼王は彼女の死を知ると、あっけなく捕えられてしまった。
人間は彼の命の代わりに服従を求めたが、
彼は誇りを選び、王妃のもとへと向かった。

呼ばれたら応える。そんな習慣を持ってるこの猫。
今回も、振り向いて返事したら——

変な動きしてる怪しい毛玉野郎に掴まった。

青年が猫を抱えたその一瞬の隙をのがさず、
密かに猫の躰から羊の青年へ跳び移らんとする存在が。

宝石を抱えた少女がこちらを見ている。
…というより、その周辺の謎生物を見ている。

周囲を軽く見渡し、そして指差し。

兎は独学の羊語で交流を図ろうとしている