—シュリザ＆カネル—



カネちゃんはいっつもギルくんを睨んでる


眉間にしわを寄せて
いつも一定の距離を保って

マハちゃんの側にギルくんが寄ろうものなら
その俊足で間にいつも割り込んでくる
マハちゃんに窘められながら
カネちゃんは口をとがらせて渋々引き下がる

そしてまた遠くからギルくんを睨む



でもなんでかな



カネちゃんは怒ってるのに
シュリザには
泣いてるように見えるの





—…


「カネちゃん」
「・・・」
「カーネーちゃーん」
「・・・」
「カネカネカｎ」
「何だ！」

カッと目を見開いてシュリザを見る
深い緑色の瞳がわずかに揺れる

「人間くさい犬は嫌いだ、あっちいけ」
「ひどい！シュリザはくさくないもん！水浴びだって毎日してるもん！」

そういう問題じゃないとでもいうかのようにカネちゃんは呆れて髪をかき上げ言い放つ
「水浴びしたってその匂いはとれない、銃弾の煙の染みついたその匂いはっ」

あ


また泣きそうだ




「あのね、向こうでみんなとご飯たべよ？みんな待ってるよ？」
「今日はね、ギルくんが作ったんだよ、ご飯、美味しいよ？」


「・・・っ、いいから向こういけ！」

片方の手でシュリザの肩をつかむと
そのままグイっと押し返し
カネちゃんはあっちを向いてしまった

「あいつが作った物なんて死んでも食べないっ…！」

小さくそう言い残して…



つかまれた肩が少し痛い
熱と　彼に触れたことで
なんだか彼の痛みも伝わってきたようで
熱い



「カネちゃん」
「こっち向かなくて良いから、ね、聞いて？」




「ギルくんはカネちゃんが思うほど悪い子じゃないよ」
「カネちゃんをいじめたりする人間じゃないよ」
「もちろんマハちゃんだってチェリオくんのことだって」
「いじめたりしないよ」
「だから、あんな辛そうな顔してギルくんのことにらまないで…」
「きっと二人ともわかりあえる…」


—…「お前に何が分かるッ…！！！」


何が起こったか分からない
見上げるとシュリザの体は下に押しつけられて
上を見上げるとぼんやりとカネちゃんの顔が見えて
鋭く、少しだけ震えた爪が
シュリザの首にあとわずかのとこで
止まっている





「守られてばかりのお前には分からないよ」
「守りたかったものを全て奪われていった者の気持ちなんて…っ」
「お前にはわからない！！！！」



まただ




また泣きそうだよ、カネちゃん





「ねえ　カネちゃん」




「なんで　いつも　怒ってるのに」




「泣きそうなの？」




私になにか　　できることって　　ないのかな

スィナンは少女に目線を合わせようと、
ひょいとその場にしゃがみ込む

名前を呼びながら、1人と1匹を交互に見る。

釣れない、の言葉を発する瞳はどこか遠くを見ている。
記憶を思い起こしているようだが、あまり良い思い出ではないらしい。