森を出る決心をした。私が根ざす土地を探すために。

　私の体は植物化が徐々に進行しており、いつの日か完全に植物になってしまう。それが3年後か、10年後か、はたまた明々後日なのか私にはわからない。けれども、いつか必ずその日は来てしまうという確信がある。だから、植物になる日のときのために、私が植物として根を下ろす場所を自ら探しに行くことに決めたのだ。

　まずは、最も近いスティルフの街に行くことにした。私はこれまでずっと森の中の小さな小さな村で育ってきた。だから、多くの人が集まる大きな街に行くのは、人生で初めてのことだったりする。私のように、顔の左半分が蔦に覆われ、四肢が植物化した体では、きっと街の大勢の人たちから奇異の目を向けられてしまうだろうと覚悟していた。

　不要な注目を避けるために、根毛を脚の形に絡め、つる草を腕のようにしならせ、なるべく人間の形を留めるようにしてはいた。でもやっぱり歩くときは根をうねうね動かさないといけない。私が歩く姿は二足歩行生物の重心移動とはまったくの別物で、正直自分で鏡で見ても気持ち悪い。手と指の代わりに葉っぱをそれっぽくアレンジしてみたけれども、かつて私も持っていた人間の繊細な指は再現できなかった。ものを掴むことは適わず、できるのは絡めとることぐらいだ。

　特に薄いものをつまむ動作が難しく、指がなくなってからというもの、ポテチが食べにくて仕方がない。試行錯誤の結果、ポテチを粉々に砕いてスプーンですくうのが手軽で安定する。でも、粉々に砕いてポテチを食べても油と塩と胡椒以上の味気はなく、ポテチを5，6枚ほど指でつまんで一気に噛み砕く贅沢感を楽しめないのであった。だから、最近はポテチを食べたいと思わなくなってしまった。

　そんな不便はあるけれども、人間の手足に戻りたいかと聞かれればそんなことはなく、むしろ植物化したことは素晴らしいことだと思っている。私の大好きな花や木という存在に、私自身が近づくことができるだなんて、とても素敵なことだ。ポテチをおいしく食べられなくなったことが、私が植物になれることの代償と思えば、安いものだ。

　まあ、ポテチはどうでもいいとして、街に来てみると私の不安は杞憂だったってことがわかった。街には変な見た目の人がたくさんいるし、数多くの色に溢れているから、私の緑色の体なぞまったく目立ってはいなかった。もうちょっと騒がれることを想像、いやまあ期待してたといっても嘘はないかもだけど、拍子抜けしてしまった。私もただの普通の人間なのだった。

　お店でものを買うときに入店拒否されないかとか、街を歩くだけで怖がられ人間版モーセの滝ができるんじゃないかとか、道端の雑草と間違えられて刈り取られないかとか、心配だったのだけれど、そんなことはまったくなく、ただ普通に道を歩くことができた。でも、頭の花の臭いがきついらしく、滝はほんのちょっと少しだけできていた。いくぶんか香水を強くしないといけないかもしれない。

　道端で冒険者達の話に耳を澄ませていると、巷では凶暴なリンゴ狩りが流行っているらしい。凶暴なリンゴが発生するということは、その土地は栄養豊かで植物の生育に適した土地なのかもしれない。それに、この街に着たばかりの人々は、みなその土地に足を踏み入れリンゴ狩りをするといういう話だ。

　他にあてもない私は、冒険者見習い達のリンゴ狩り行列に付いていくことにしたのだった。

マイ(40)の声が届いた：
マイ「……武器枠あいているかもしれません」

エレン(236)の声が届いた：
エレン「そこのあなたっ防具が痛んでいませんか？！
修理・新調の御用がありましたら！　詳しくは木漏れ日にてー！」

リベル(1273)の声が届いた：
リベル「さて、どうしたもんかな」

ペペロニ(1358)の声が届いた：
ペペロニ「さぁ、冒険に出発だー！！（（新規参入です、どうぞよろしくー」

ミース(1598)の声が届いた：
ミース「モーイ！」

ウィータ(1782)の声が届いた：
ウィータ「この辺なんか臭くない？」

ジェラード(1819)の声が届いた：
ジェラード「さぁ、このリンゴ野郎、覚悟しな！」

ケイ(2126)の声が届いた：
ケイ「やっぱり森の空気は良いね。ゾンビはもうこりごりだ。」

ラト(3171)の声が届いた：
ラト「やっほー！」