「ふわ・・・ぁ〜・・・」

ここはスティルフの街。多くの人々が行き交う、活気にあふれた街である。無論、行き交うのは『人』に限らないが・・・
そんな、都会の喧騒と呼ぶにふさわしい賑やかさの中で、小さな妖精が深い眠りから目覚めた。
春の妖精、つくしである。
舗装された道路から少し離れた花壇の上で、大きなあくびをする。

「んぁ〜、よく寝た・・・って、あれ？」

目覚めが悪くとも、すぐに気づく違和感。何かが、違う。

「ここ、どこ・・・？」

つくしは寝ぼけ眼で辺りを見回した。だが、すぐに、その目は大きく見開かれることとなる。
『何か』どころではなかった。すべてが違う。つくしが眠った場所と、目覚めた場所。
それが、根本的に違う。
おまけに、自分よりも一回りどころか、百回りくらい大きい人間が往来しているのだから・・・

「・・・！な、なにがなんだか・・・？」

つくしは驚きを隠せないものの、前向きさのおかげか、さほどは動じていないようであった。
だが、次の瞬間、何かを思い出したように、つくしは言葉を発した。

「そうだ！ふぶきちゃん、ほたるちゃんは・・・！？」

『ふぶき』と『ほたる』。どうやらつくしの友達の名前らしい・・・が、二人からの返事は、帰っては来ない。

「ふぶきちゃん、ほたるちゃん・・・」

よくよく考えてみれば、つくしは長い冬眠から目覚めたばかりなのだ。つくしが眠っている間に、二人はどこかに行ってしまったに違いない。
でも、その『どこか』は、間違いなく、ここではない。
つくしは薄々そう感じていた。
そもそも・・・ここには、『ふぶき』も『ほたる』もいないのではないか。

「どうしよう・・・」

あまり動じていなかったはずだったが、次第に不安が増してくる。
さらに、つくしを困惑させている原因は、もう一つあった。それは、季節だった。
つくしは春の妖精である。つくしの役目は、植物に力を与え、『春』を形作ることだった。
つくしのいた世界では、それぞれの季節を司る妖精がいる。そして、各々が力を行使することにより、季節か形作られているのである。
その中で、つくしは『春』の役目を担っていたはず。これから冬眠から目覚め、冬の世界を春に変えていく・・・
だが、目の前の光景は違ったは違う。冬どころか、緑が豊かに茂っている。
つくしが、『力』を使うまでもなかった。

「困ったなあ・・・これから一体どうすればいいんだろう」

目立たない場所にいることと、その身長の小ささから、誰一人としてつくしの存在に気づかない。
もしつくしが思い切り叫んだとしても、人々の雑踏にかき消され、誰も見向きもしないであろう。
自分のおかれた立場に、時間が経つほどに困惑が増すばかりである。

「でも、こうしちゃいられないんだよね」

つくしには、持ち前の好奇心がある。
今までに見たことのない光景に困惑するばかりではない。
困惑の裏で、ワクワクしてさえいた。

「何はともあれ、動いてみなきゃ、分からないよね・・・！それに、もしかしたら、ここにもボクみたいな妖精さんがいるかもしれないし！」

考えても仕方がない。つくしは、すくっと立ち上がり、自らの羽で飛び立った。

「でも・・・どこに行けば良いかは、さっぱり分かんないや」

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アルノ「しゅっぱーつ！マイクテストマイクテスト〜♪」
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