セルフォリーフ滞在記録：1日目

　三和伊たちの実験が成功したらしい。
　気がつけば俺はどことも知れぬ草原に倒れていた。ハルマーが起こしてくれなければ、もっと寝ていたのかもしれない。
　周りを見渡せば明らかに日本の土地ではなく、実験に参加していた他のメンバーの姿も見当たらない。
　皆は無事だろうか。義父や教授たちはともかく、陽菜たちはまだ一介の学生でしかない。全員がばらばらに放り出されて路頭に迷っていなければいいのだが。

　遠くに見える街並みから、欧州のどこかへと飛ばされたものと思っていたが、実際に街に入ってみてここが明らかに地球ではないと分かった。
　あまりにも多種多様な種族が混在している。地球では我々ライカを含め数える程度にしか存在しなかった人間族以外の知的種族だが、ここではむしろ人間族のほうが少数派といえるようだ。
　不思議なのが、殆どの人々が日本語で会話をしていることだ。なかには言葉自体を使えない者もいるようだが……。試しに英語やイタリア語で話しかけてみたところ、何故か日本語で返事が返ってきた。どうやら実際に口にしている言語に関係なく言葉が通じるようで、看板などまったく見たことの無い文字で書かれていても、書かれている内容が理解できてしまう。
　そういう魔術的法則が働いている世界なのだろうか。

　ともかく、先ずはこの世界――セルフォリーフというようだ――での活動拠点と資金が必要だ。地球ではない以上、当然、日本円などが使えるはずも無い。
　なに、野宿は慣れている。しばらくは街の片隅の目立たぬ所で寝起きすればいい。ハルマーが居れば多少の寒さも問題ない。今の俺のこの姿で野宿するには、かなり危険かもしれないが……仕方あるまい。とにかく人目につかぬところを探すしかない。
　それよりも資金だ。手持ちの現金が使えないとなると、何か物を売るか、あるいは仕事をしないといけないことになる。手持ちの品で金になるような物は……あるにはあるが、売るわけにはいかない。どれも大事な商売道具だ。
　となると必然的に何らかの仕事をしなければならないだろう。それも即金が手に入る類のだ。

　仕事探しに方々で聞いたところ、どうやらこの世界には俺のように異世界から来た人々が多数いるらしい。そういった人々に対して仕事を斡旋しているところがあったので、ひとつ請け負うことにした。
　なんでも、露店に並べられていたという林檎が突然暴れだし、街を出て東へと逃走したらしい。さっぱり訳がわからない。
　他にも依頼を受けた人が多数いるようで、「行けばわかる」と言われてしまった。何がなんだかわからないが、しかしこういった仕事がこれまでなかったわけでもない。恐らく現地で次の指示があるかするのだろう。

　地球側の動向が心配だ。
　実験については届出が出されているとはいえ、恐らく現場に居た16名全員がラボより居なくなっているだろう。
　俺単独での行方不明なら問題ないが、会社の重役である義父や被警護対象の陽菜までもが行方不明では大事にならざるを得ないはずだ。
　鹿島さんや霧島社長がうまく立ち回ってくれればいいのだが……。

マイ(40)の声が届いた：
マイ「……武器枠あいているかもしれません」

エレン(236)の声が届いた：
エレン「そこのあなたっ防具が痛んでいませんか？！
修理・新調の御用がありましたら！　詳しくは木漏れ日にてー！」

リベル(1273)の声が届いた：
リベル「さて、どうしたもんかな」

ペペロニ(1358)の声が届いた：
ペペロニ「さぁ、冒険に出発だー！！（（新規参入です、どうぞよろしくー」

ミース(1598)の声が届いた：
ミース「モーイ！」

ウィータ(1782)の声が届いた：
ウィータ「この辺なんか臭くない？」

ジェラード(1819)の声が届いた：
ジェラード「さぁ、このリンゴ野郎、覚悟しな！」

ケイ(2126)の声が届いた：
ケイ「やっぱり森の空気は良いね。ゾンビはもうこりごりだ。」

ラト(3171)の声が届いた：
ラト「やっほー！」