３、やきざかな！ 　俺の名前はおおぞらかける。ちなみに前回戦闘後止むに止まれぬ生理現象（※自主的）で血ダルマになった事を受け、現在の俺のアダ名は『はなぢ』となっている。 　今までの人生でもずこに付けられた渾名の中で最悪だったのはおしっこかけるとかその類だったんだけど、今回は正直そのナナメ上をいく屈辱感がある。 　で。 　今回も引き続き海洋探索、どうやら未踏の海域への調査の橋頭堡になりうる補給基地的なポイントがあるらしいのでそこを目指して進んでいった俺たちを待ってたのは、見覚えのある原生生物ともう一体。 「なにあれ」 「ドクターフィッシュ、だって」 　 　もずこ（※探索形態）から通信が入る。なんでも事前に貰った『しおり』に書いてあるらしい。 「あのさあ」 　俺の言葉はもずこに届いてたかどうかはわからない。既に乱戦になっていたからだ。 　ドクターフィッシュ。そう聞いて思い浮かべたのは、なんというかいわゆる一昔前に流行った魚につついてもらってなんか気持ちよくてメディテーション気分？みたいな、ああいかにもソレ系に転びがちな女性（年齢層問わず）が好きそうな系のアレ？というかなんというか。 　医学的根拠は？学術的証拠は？とか言いだしたらキリがないどころかそれはそういう性癖というか趣味の範疇というか詳しく突っ込んだらキリがねえじゃん的な流行り物のアレを想像したんだ俺は。 　俺だって掃除サボって学校の池のコイとかに足の指ちゅぱちゅぱしゃぶらせてなんかイイ気持ち的な遊びしたり（※その後教師から大目玉）してた事もあったしさ。そういうのかなって？ 　で、いざフタ取ってみたら裏切られたね。 　いや、体の一部は魚？みたいなんだけど、よくわかんねえんだ。どう見ても白衣着たオッサン（しかも無駄に耽美）だもん。 「こうきたかー」立ち回ってる最中も現実を認識できる範疇を振り切って頭が破裂しそうになってんだけどさ。 　あ、ちなみにタコデバイスの制御は安心安全の脳幹直接リンク方式でオートで頑張ってくれてるんで問題ないけど、なんかごめんなって気になる。 　俺、学生生活のすべてをかけて作った最先端システムの集大成に何やらせてんだろうって。 　そんなわけで立ち回りは完了。新規でブチ込んだ拡張スキルストーンの動作もいい感じ。と、上々の滑り出しだったんだ。 　でもそれだけじゃ終わらないのが現実というかテリメインというか。 　例によって反省会（兼ごはん）の席で、もずこが言ったさ。 「かけるー、ごはん作ったから食べれ」 　幼馴染の（一応）オンナノコから掛けられる言葉としてはご褒美的なはずのそれに、俺の全身の汗腺が開いた。 　（ちなみに過去に俺がその言葉を聞いたのは数回あるが、詳細な経緯を思い出すのを脳が拒否している） 　確かにこの海では基本物資は可能な限り現地調達なので、探索時の食料なんかはありがたく海でとれた（あるいは拾った）様々な食材を利用するのが普通だ。 　海面に浮かぶ俺たちの移動型探査艇（ゲル）には最低限の食材プラントやら自給自足システムが搭載されてるけど、それだけじゃ足りないし、そもこのテリメインという新世界環境の適応試験的なアレでは可能な限り現地のもので活動しようというコンセプトもある（らしい）んだけど。 「これは、なに？」 「焼き魚」 　その時点で、視界に入れたくない。だってさっき戦ったの、アレだろ？ 　いや正確には二種類いたけど魚的なものといえば少なくともマイケルのほうじゃないだろ。 　つまりだ。 「なんで俺だけに食わせるんだよ」 「よりはしっこく？なれるらしいよ」 「らしいって」 　つまり皿の上に乗ってる微妙に見ようによっては切り身の一種に見えるのは、元アレだったナニかなわけだろう。 　よく第三世界とか割とまだアグレッシブな世界観が残ってる国とかの食堂でも、よくこのテの『どこで汲んできたか聞かないほうがおいしい水』『どうやって作ったか知らないほうが美味いもの』系のものって割と普通に出てくるって話は聞くけど、それと同じ類だ。要するに。 「食は基本っていうじゃん？体づくりのためには必須だぞー、好き嫌い言ってないでおいしくいただけー」 「言ってる事はマトモに聞こえるのがなんか複雑だぞちくしょおおおお」 　なんか薄ぼんやりと、ああ、今この衝撃画像を記録に残しておかずに済んだことだけでも良かったのだとなんか英雄的な心境になってた。 　ちなみに味についてとか、これ以上の言及はとりあえず記録しません。後々の自分の心のケア的な意味で。だ。 ====

おおぞらかけるはアイテムNo.3 ナマコ を使用した。

精神が3上がった！

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

ここ、最先端探索拠点を越えてしまえば、そこはもう未開の海だ。
おおぞらかける達のような探索者たちがどんどん先へ進めば、
後々海底探索協会が、このような拠点を設けていくのだろう。

この先はどんな危険が待ち受けていても不思議ではない。
誰も踏み入れたことのない場所なのだ。
準備を怠らず、慎重に進むといい。

どのような生き物が居るのか、どのような未知が、はたまた宝が眠っているのか。
それはこの先へ自ら進んでいく者にしかわからないのだろう。

海は、まだまだ先へと広がっている。