王城の城壁の外には空を隠すほどに背の高い樹木が生い茂った森林が広がっている。
城壁を囲むように形造る深い森は人間を襲う原生生物が生息するなどから、天然の城壁として、また城壁よりも強固な壁とも云われており、こんにちまでの一揆軍の侵攻を阻み続けた。
そしてそのような役割もあってか、いつからこの森林は「護りの森」と呼ばれるようになった……らしい。

その森林を形成する茂みの一つに一人の青年——レンツと、少女が身を隠していた。
少女は美しい金髪を持ち整った顔立ちをした風貌だが、表情の乏しさから精緻な人形を思わせる。

レアと呼びかけられた少女はその問いかけに頷きこそ返すも、それ以上の反応はない。
しかし無理もない。彼らが潜めている茂みの向こうの生き物には、それだけの価値がある。

その生き物の名前はユニコーン。
伝説上の生き物が彼の目の前にいた。




何故このような状況になったか。話は、二日前に巻き戻る。
レンツのパーティには、初日から行動を共にしていた別のパーティがいる。
小隊は四人で行動するのが好ましいとあの赤毛の少女は言っていたが、各地の情報や物資の面を考えるとそれ以上の人数と組んだ方がいいと話し合った結果それが決まった。
そこに諸々のきっかけで知り合った友人がいたり……と、いくつかの経緯を経て『同盟』を組むことになったのだ。
かくいうレンツの隣にいるレアも、同盟を結んだ向こうのパーティの一人である。

その同盟同士での練習試合のあと、騎士の少年・ロウが同じパーティの仲間にあることを告げた。

少年の後ろにいる翼人の少女——エルが申し訳なさそうに頭を下げる。目元を擦り、必死に涙を堪えているようだ。

そう。城壁を囲むように形成された森林は強力な原生動物が多く、森林を通るルートを選ぶパーティは少ない。数だけが勝っている一揆軍としては、多方から攻めて少しでも戦力を分散させたいのだ。
また加えて別の地区では、どうやら城に繋がる隠し通路が見付かった。
だからもしかしたら、他の地区にもそれが存在するかもしれないのよ——それがルリアンナの言い分だった。

平原で戦った兵士は決して強くなかったものの、それでも正規の軍人だからね。
そう諭すようにパーティのリーダーであるテオは口にする。
エルの顔がさらに曇る。リーダーの言葉が決して意地悪ではなく身を案じてのことだと解っていて、しかしそれでも譲れないものだからなのだろう。よしんば楽に倒せる相手だとしても、援軍などを呼ばれたらすぐに逃げられなければいけない。

なら要するに、逃げ足の速い誰かがついていけばいいのだ。

騎兵であるシュシュリが頷く。これでもしもの時にも逃げられるし、何より彼女自身が戦力となる。
中々悪くない案だと思うのだが、どうだろうか？

その翼人の少女はシュシュリに何度も頭を下げている。
口は感謝の言葉を象っているが声は聴こえてこない。それでも、涙の筋が残っている少し晴れた表情からは言葉以上の意味を感じられる。

かくして攻城戦は『同盟』でメンバーを分け、攻めることが決まった訳だ。
またそこから森林内で迷子になり二手に分かれてしまったりもしたが、今現在俺達の目の前にはユニコーンがいる。あちらのパーティもユニコーンには出会えただろうか？
レアに聞いたところ、ユニコーンは獰猛な生き物だが清らかな女性の前では大人しくなるという。
それならばまぁ、大丈夫か？少なくとも人数の多さが悪い方向に繋がるということはないだろう。

ふと視線を落とすと、右脇に差していた柄が淡く瞬いているのが解る。
この反応は契約出来るエンブリオが近くにいる——つまり、あの伝説の一角獣はこの世界ではエンブリオということだ。

その旨を未だにユニコーンを観察しているレアに告げると、彼女もすぐに得物を取り出した。

——守護のシンボルともいえる神獣の実力とは、さて。
ここからは冒険者の時間である。




※今回はPTメンバーに加えテオドール（210）さん、ロウ（805）さん、テティ（956）さん、レア（1070）さんをお借りしました。ありがとうございます。

腰に手を当てて、ぷんぷんと怒る。

なだめるシロとは裏腹に、なかなか落ち着かないミルフィーユ。

そして状況を確認した彼が、
隠すどころか笑い始めたその様子を見てまたミルフィーユは取り乱す。

未だに落ち着きを取り戻さないミルフィーユ。
そんな様子をよそに、彼は何か思いついたのか
突如近づき、真剣な眼差しを向けて壁ドンをされ、ミルフィーユは一瞬怯む。

驚いて身動きが取れなくなり、思わず彼を見返す。

思わず息を呑んだ。
男の人にここまで接近されたことがないのは確かだが、
それ以前に、そのキラキラと風に揺れる銀の髪と、強く輝く赤い瞳、
そして整った顔立ちに思わず魅入られそうになる。

耐え切れずに、ふ…と目線を下にそらす。
……そして否応なしにも目に飛び込んでくるのは、その現実。

そう、男 の 裸 エ プ ロ ン 。

ミルフィーユは目を閉じたまま、両手で貴方を突き飛ばそうとした！

髪を書きあげるごとに柑橘類系の様な甘い香りが漂う。

甘い声でレンツに近づき満面の笑みを浮かべ頬にキスをした

　
　　　　　　どうでもいいことだと笑い飛ばすように、手をひらひらさせる。
　　　　　　 それこそ、商談前の世間話でもしているような感覚で。　

　
　　　　　　理不尽である。　
　

　
　　　　　　ふっと息を一つ。
　　　　　　 余り期待をしていない様子は、変わらない表情からも窺える。　

　
　　　　　　他にはそうね・・・などと、思案する仕草を取る。
　　　　　　 この手の危なっかしい話題も、嗜む程度には可能らしい。　

　
　　　　　　目の前の女性には、どうにも、倫理的な問題を軽視する傾向が見られる。
　　　　　　 目的のためには手段を選ばぬ例を、淡々と口にする。