[No.32:Lela=Loreley]
[No.10:Eyes=Marchen]

少女は夢見の力によってレスティア＝ノールと連絡を取り合っている。
今はその何度目かの結果を青年に伝えていた所だ。

・〜・〜・〜・〜

シアは膨大な情報を整理して道を作っていく。
『システム』としての本領発揮だ。

僕はその様子を眺めながら『千里眼』の視界の調節を試す。

全てを見据える、とはよく言ったものだがそれに振り回されて見えすぎているのが現状だ。
少しずつ改善しているものの、もう少しかかりそうだ。
もどかしさに歯がゆい思いをしながら僕は自分のやるべき事に集中した。




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その一方で一揆は佳境を迎えていた。

僕達は新王パラダイスと対峙し、激闘の末打ち勝ったのだ。
奪われていたネクターの花も取り戻すことができ、全ては万事解決……

そう、ネクターの問題は解決といえるものの、その元凶には逃げられた。
だからまだ終わりではない。
いや、むしろこれからが本番と言っていいだろう。

新王は傀儡であり、その王冠はハリボテであったという事。

その傀儡の主——新王にとりついていたものは庭園の奥に逃げていった。
あの場にいた誰にも干渉せずに、だ。

別れ際にサバスさんが漏らしていたその名前を反芻する。
あの様子から考えるとサバスさんはあれの事を知っているようだけど……？

とはいえ、僕達は進むしかないだろう。
たとえそれがどんな奥の手を持っていたとしても。
結局の所それを放っておくわけにはいかないだろうという事だ。




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その夜。
ふと目が覚めた僕は夜の散歩に出かけた。
今夜はいい満月の夜だ。

明るい満月が照らす道を歩く。
そういえばシアと再会して以来、『転生者』絡みの問題やら一揆やらとずっと掛かりっきりだった。
こうして二人でゆっくりする時間もたまにはないと根を詰め過ぎてしまうかもしれない。
これからは合間を見てこういった休憩もしていかないとな、と思った。


そんな事を考えながら歩いていると、どこからか激しい気配を感じた。

この気配の持ち主、いや持ち主達の事は良く知っている。

そう、ふわもこ達——フェリオ、カイル、ピートの三人だ。
見た所、カイルとピートが激しくぶつかり合い、フェリオはそれを見守っているようだ。
三者とも表情は厳しいが、それは険悪というものではなく真剣といった類だ。

そう思いながら、僕は物陰から見守る。

そう言いあい、二人は再びぶつかり合う。
どうやらカイルの鍛錬に二人が付き合っているようだ。

カイルは吠え、今までにない渾身の力を振り絞る！
そしてピートも万全の体制でそれを迎え撃つ！

二人は交錯し、少し離れた場所に降り立つ。

ニヤリと笑うピートの視線の先には白く輝くカイルの姿があった。

ふわもこ族の変態を初めて目の当たりにした僕は驚くとともに、彼らのこれからの戦いに向けた意気込みを強く感じた。
そして僕達は喜び合うふわもこ達の様子見てその場を後にした。
これ以上ここにいるのは野暮だろう。

こうして僕達は温かい気持ちで再び眠りについたのだった。