街で受け取った賞金首の資料と、視界に収めた人物を見比べながら薙疾は呟く。


「強い相手と戦いたい」
「やられっぱなしは性に合わない」

そう言い続けてきた薙疾に、ようやく巡ってきた話。
それが今回の賞金首狩りである。



受け取った資料には、今回の相手──湖岸坂桜のことが記されている。


　　　　　曰く、魔王の下僕。
　　　　　　　　曰く、死んでも死なない。
　　　　　　　　　　曰く、襲われた相手は死なない程度に血を抜かれる。

そして、資料はまだ膨大にあった。
彼女の生い立ち、戦歴、それらが恐ろしいほど詳細に書かれている。

薙疾は別に、経済や国家運営に明るいわけではない。
が、それでもこの世界の法と仕組みが正常でないことだけはわかる。

言って、＜負不知＞を握り直す。

二度と負けないと言う覚悟。
シェイドの力を込められるという性能。
そんな名の武器を。

モクラはこくこくと首を縦に振った

どうやら文字なら何でも誰にでも伝わると考えているようだ……

「はぁ……」とため息をこぼす

僅かに浮かない顔しつつ、料理を受け取る。

"おっと"という顔を浮かべる

薙疾が自分のシェイド、薙影に問う。

それは独り言。

桜が今まで倒して来た相手のことを見ていないように、
薙疾も桜のことを見てはいない。

　元素の世界『メルンテーゼ』在住の高峪若葉(わかば)ちゃんは産まれた頃から目が見ませんでした。幼少の頃に両親から見放され、修道院に行くも裏切られ、人間不信・恐怖症が確認されています。
　様々な治療を受けるも効果は芳しくなく、声が聞こえれば狂乱し、幻覚幻聴も確認されました。
　都内の病院での治療のかいもなく、病状は悪化しており早急な高位エンブリオによる治療が必要です。
　新王政の改正により、エンブリオの一斉管理が敷かれ国民に平等なエンブリオの利用が可能になることとなったのですが、一揆により計画は中断しています。国王に謁見するも返答は芳しくないため このままでは若葉ちゃんが助かる可能性はありません。
　そこでやむをえず、一揆に潜入し直談判をした結果、受け入れの内助を頂けました。しかし、提示された金額が高額な為、とても個人で払える金額ではありません。
　そこで、私たちは無限の可能性を秘める若葉ちゃんの命をつなぐお手伝いをさせていただきたいと考え、その費用を作る為に『若葉ちゃんを救う会』を結成し募金を募っています。