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　わたしが"この力"を初めて扱う事ができたのは、メルンテーゼに足を踏み入れる半年ほど前。
"寄り合い"に入ったあの日から数えれば、三年が経った後のことだった。



如何に超常的な力を持つ種族も、少数である以上"人"——人間種族に睨まれては、平穏な生活は送れない。
"人ではないもの"が平和に暮らしていく為には、脅威であると思われないことが必要だった。
その手段のうち一つは、可能な限り無害である、有益であると認識させるという、大きな対策。
もう一つは、そもそも自分が人ではないことに感付かれないようにするという、小さな対策だ。

わたしたちの"寄り合い"は後者を前提としつつも、その両者を複合させ、
人が"人ではないもの"を探す動機を抑える活動をしていた。
学べば人と同じ手段で生きられるものには、その術を。
人と異なる手段でしか命を繋げぬものには、波風を立てず力を用いる術を考えた。
人に見咎められそうな手合いには、争いを避けるために出来る限りの"説得"をした。

そんな"寄り合い"にとっては、"人ではないもの"が街一つを消してしまうなんて事件は大打撃だったはずで、
しかも張本人であるわたしは、自分の力を抑える方法なんて全く知らない、とても危険な存在だったはずだ。
だというのにわたしを快く受け入れてくれた彼らに、わたしは出来る限りのことをしたいと考えていた。

とはいえ、わたしの力は相手もタイミングも選ぶことができず、"説得"には全く不向きだった。
酷かった時など、言葉での説得に応じず襲いかかってきた"リザードマン"に驚いてわたしが泣きそうになり、
一緒に説得にあたっていた仲間がわたしと相手の両方を気絶させることを強いられた。

ただ護られて何の役にも立たない、そんな焦りがわたしを息苦しくさせていた。



そんな中で、わたしは出会うことになる。
わたしと同じものを抱えていた、あの男の子に。

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視線に気付いてカメルの奥をうかがう