それは肉と言うにはあまりにも大き過ぎた。
大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。
それは正に肉塊だった。
君の前には今——そんなドラゴンステーキがある。

味も不安だが、むしろ量が。量が酷い。
胃袋の限界に挑むどころか、人類の限界への挑戦じみた圧倒的物量。
これを食らい得るは悪鬼か超人か。
というかコープスキャンドルが刺さってる。
今際の際の輝きか、その炎は目も眩まんばかり。
何を訴えんとしているのか、精神を掻き毟るかのような悲鳴を上げている。

嗚呼——彼女はこれを、こんなモノを、料理と呼ぶのか。

栄養はきっとあるだろう。
味だって食べてみれば、悪くはないかもしれない。
しかし何と言うか、救われない。
地獄を体現したかのようなこれでは、心が救われないのだ。
果たしてこれを、どうすればいいのだろうか……？

もう少しお話を聞いていたかったのですが、と白雪はグレンダの背に向かい呟いた。

グレンダが何か言いかけたのに反応しようとしたが、敵が囲まれていると気付いた時、ロックの頭からその事は吹き飛んだ。

そう言って走り出す。少し前にはテラーとＣＨＪが居たはずだ。合流して迎え撃てば問題無い。そう自分が考えた事に、少し笑ってしまった。

多分、いい変化なのだろう。族長に聞けばそう言うはずだ。
そんな事を考えながら前に居た２人と合流する。

グレンダの姿が無い事は一旦置いておき、敵と相対する。
彼なりの信用なのだろう、別行動を心配しないと言うのは。

ロックの武器が闇に染まる。敵と戦う事より、人と話している方が楽しいと。
人の事を詳しく知りたいと。
そう思ったのは初めてだと言う事にも、今は気付かない。

全力で薙ぎ払う。敵の半数がそれで消し飛び、後は蹂躙するだけ。

敵を蹂躙し終え、そう考える。
そんな事を考えるのは初めてだと言う事にも、彼は気付かず、話のネタを考えるのであった。