あれから数日が経った・・・。

たった数日で色々なことがあったと思う。
マハンの生き残りの事、隠し事がバレてしまった事、ノエミに刺された事。
そして、ヘリヤが使命を破り自国を裏切った事。

全て私に関わりがある事。
アステマ・ファムを使ったことが切欠だ。


改めて実感した罪の重さに食事もまともに口に通らず、ずっと部屋に篭っていた。
時々リーズルやルイーザが心配になって部屋にきたが『大丈夫です』と扉越しに答えるだけ。

誰とも会いたくなかった。
誰とも顔を合わせたくなかった。
部屋が一緒のグレーテルすら追い出し、一人篭っていた。


恨みを持つものにも殺されず、粛清の命を受けたものからも殺されず、自分でも死ぬ事もできない臆病者。
それならいっそこのまま何もせず飢えて死ぬのもいいか、そんな事を考えていた。

その通りだった。
自問自答は自分で答えがない限り成立はしない。
でもこの問いに関する答えは私にはわからない。
あるとすれば、それは全てを放棄する事・・・。

毎日がこんな調子だった。
そんな日が続いたある日・・・。


——コンコンッ



誰だろう？またリーズルかルイーザかな。
私はいつも通り扉越しに『大丈夫』と答えようとした。

そう弱弱しく聞こえる声はリーズルやルイーザのものではなかった。
あの日以来ずっと夢に出てきて、私の胸を貫く相手。

か細く、今にも途切れてしまいそうな声でノエミが話しかけてきた。
私もノエミに話しておきたい事があったので招きいれた。


ノエミはおずおずと扉を開け、私のやつれた顔をみると俯いてしまった。
数日間まともに食事を取っていないので、相当酷い顔だったのだろう。

私の傍まで来るともじもじしながら時折何か話そうとするが、すぐまた俯いてしまった。
私を刺した事に責任を感じているのだろうか。

ノエミの代わりに私が口を開いた。

そう言うとノエミは首を左右に振った。

私は安堵した。
真実を話し軽蔑されるんじゃないかとずっと思っていたから。

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フリエが現れ、ゲイルを連れて行っていってしまった後の事だ。
意識が朦朧としていたマリアをリヴァランが担ぎ帰ろうとした、その一瞬。

ラスニールがマリアの胸を突き刺していた。
突き刺さったラスニールはマリアを完全に喰らい尽くそうとしている。

その声や、違和感に気づいたリヴァランが一瞬遅れて、ラスニールをマリアから引き剥がした。

リヴァランは態勢を低くし、一歩でノエミの懐に潜り込む。

そう思ったが、身体がふらつき奪う事ができなかった。

体勢を立て直される前にラスニールが仕掛けた。
身体もうまく動かない、反撃でノエミを傷つける事などできないリヴァランは受け流すことしかできなかった。
防戦一方だが、ゲイルとの戦いで受けた傷も広がっていき徐々に押されてきていた。

攻撃の手が徐々に弱まっていった。
その隙をリヴァランは逃さなかった。

刀を絡めるように受け流し弾くと、ラスニールの支配から開放されたノエミが膝をついた。

2人は急いでマリアの元に駆け寄った。
胸部、心臓を貫かれたマリアから大量の血が流れ出していた。
顔も徐々に白くなり、呼吸も徐々に小さくなっていく。
ノエミが必死に治癒の魔法をかけるが止血程度にしかならなかった。

いつの間にか背後にいたフリエに2人は驚いていた。

ちらりとマリアの傷口を確認し、頭を抱えていた。

そう言って心臓の辺りに手をかざし何か呪文のようなものを唱えている。
カチッカチッという音と共にマリアの顔色も戻っていった。
それだけじゃなく流れていた血もマリアに戻っていっているようだった。

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どうして私を助けたのか。どうやって私を助けたのか。
そもそも約束とは・・・。
疑問ばかり残ってしまった。


また一人で考え事に浸っていると

家族？
こんな人殺しを家族だと思ってくれているの？

頬を一筋の涙が伝った。

その一言で何かがぷつんと切れた時にはもう。

ノエミの胸の中でめいいっぱい泣いていた。
こんなこと、子供に教えてもらうなんて思いもしなかったから。

これじゃどっちが母親かわかりませんね。

この後数時間語るのでカット......