妖魔国暦第二紀6224年7月。


エリス・セーレ＝サタナエルによって魔銃アステマ・ファムが破壊されたことを確認した
現政派、及び旧政派は彼女の粛清計画を中断、凍結した。








魔器の一つが失われたことによりサタナエル公爵家も正式に断絶取り潰し。
コーネリア領は王政側に直轄領として吸収された。













シヤンハイルに出向したまま消息不明となった魔導生体研究所のミスト、カーラはそのまま破棄。記録抹消。











同様にユベール領から派遣されていたカラバ・ザ・ロングブーツは
現地の通信兵から遺灰と魔剣が届けられ、正式に戦死として処理された。




先行して刺客として送られていた短命変異種、ヘリヤ・アウグスタ＝フォルネウスも依然消息不明。



























魔銃アステマ・ファムの欠失を対外に隠蔽する為、一連の騒動は闇に葬られ、
行方不明のヘリヤ・アウグスタ＝フォルネウスの捜索もやがて打ち切られた。








ただし、同地方での彼女の目撃情報はその後も数多く遺されている。

くすくすと冗談めかして言うと顔を覗き込み。

肩にぽんと手を乗せるとふかーいため息をつき。

任せておけとばかりに胸を叩き。
ヘリヤのきごちない笑みに気づくと、少し心配げに眉根を寄せて。

前に同じように別れてそれきり行方知れずになった大切な少女のことを思い出し、ふいに不安を感じて、駆け去る後姿を思わず追いかけようと2,3歩踏み出すが思いとどまり。

半ば自分に言い聞かせるように呟くと、夕闇に紛れていくヘリヤの姿が見えなくなるまでその場で見送った。

ヘリヤの意を決したような表情と言動を見ると、コクリと頷いた。

駆けていくヘリヤのことを、手を振って見送った。

彼女は重々しい聖書を構えた。