明らかに苛立った様子で、唇以外動かさずにそう言い放つ。

翼をたたんだ後もまだ、膨らんだままの胸毛を撫で付けながら。
古い英雄譚をひとつ、思いつくまま口ずさむ。
が、その視線の先で揺れ、小さく光る耳飾に気づくと、口ずさむのをやめた。

再び身をかがめ、己の足元を見下ろす。ついで彼の足元も。
「ちょっと失礼〜？」なんて言いながら、彼の後ろに回ろうと。
その際響く足音は、やはり人とは違うもの。
彼が厭わないならば、てちてち、ぺたぺたと、軽く平たい足音が、彼の周りをぐるりと回る。
そうしながら、彼の声に歩みを止め、顔を上げ。

ころころと、笑う声はそのままに。名を繰り返す彼に、えぇと頷く。

てちてちと、また彼の前へと戻ると、ちょんと膝を曲げてお辞儀をしようとしたのだが。
彼の目には映らぬのを思い出して、途中で止めて、そんな風に言い直すのだった。