「だからおめぇの技は雑すぎんだって言ってんだろォが！！」


あたりにひびくどなり声。
ビクッ、と猫はみをすくませます。


セイウチとのたたかいのあと。
ブイサインまでしてまんぞくげな猫を見たとり——ししょーは、イライラしたようすでいきなり猫のひたいをつつきました。
猫がひたいをおさえてうずくまったところ、すかさずいかりのまじった声でさいしょのことばどおりに猫をしかりつけたのでした。

さっきまでうかれぎみだった猫も、ししょーのことばにハッとなってうつむきます。


けいやくをうけいれたのも猫のたたかいかたがあまりにもへたっぴで見ていられなかったから、というししょー。
そのししょーにけいやくまえからちゅういされていたことでした。



「つーか途中のありゃあ何だァ？俺の真似ってか？調子乗ってんじゃねぇぞくるぁああァッ！！！」


そしてさっきのたたかい。
猫はししょーのちからをひきだしてわざをくりだしたものの、そのこうげきはおそまつなもの。
あいてのせいうちにかするどころか、ぜんぜんけんとうちがいのほうへわざをはなってしまったのです。

これではししょーがおこるのもむりはありません。


「ったく・・・・・威力はともかくちったぁ技の精度も磨きやがれってんだ。」


『でも、ししょーのちからって、あばれておさえきれないかんじだったのです。』


猫がひかえめにくち、もといボードをはさむとししょーは「あ゛ァ？」とすごみをきかせてにらんできましたが、すこしかんがえこむと、じょうだんはんぶん、もうはんぶんはおそるおそるといったようすで猫にたずねました。


「・・・・・もしかしてアレか？おめぇ、契約したってのに俺達の力すら満足に制御できてねェってのか？」






猫はとまどったようにおろおろとしていましたが、やがてためらいがちにこくりとうなずきました。
かかえるボードには『たぶん、なのです。』のもじ。

それを見たししょーはかたほうのはねでひたいをおさえるとふかぶかとためいきをつきました。

「こりゃ契約を早まったかもしんねぇなァ・・・・・。」
















と、いうわけで。


「ほら次ィ、とっとと撃てや！！」


「にゃっ！」


つばさでさししめされた木にわざをはなつ猫。
ちからのあつかいについていちからまなびなおしてとっくんです。

でも、やはりおおきなちからをひきだそうとするとどうしてもふあんていになってしまうようです。


「ったく、もうちったァ器用にできねえのかよ？」


『小生もっとがんばるのです！』


「頑張っても結果が出せねェんじゃァ意味ねェんだよ。」


『…ごめんなさいなのです。』


「チッ、謝ってんじゃねェ！！」


なんだかギクシャクしたくうきになってしまっています。
これではよいけっかなどのこせそうにありません。
それをかんじたのか、ししょーもわだいをかえてみたようです。


「ところでよォ、おめぇの持ってるボード。アレどうなってんだ？」


『？』


「そう、それだ。文字を書いてるときもあるみてェだが、とっさの時なんか文字書いてるヒマねェだろ？なのに文字が書かれてる時があんだよなァ。」


ししょーのぎもんに、猫はなっとくしたようすでにっこりわらってボードに手をそえました。


『それはこうやってまりょくをながしこんでこんなふうにもじにすれば——』



「随分と器用な調整ができてんじゃねェかクソがぁああ！！！」



まだまだはじまったばかりのいっきなのに、はやくもさきがおもいやられそうな凸凹コンビなのでした。

と書かれたボードでパタパタとあおいでいます。

と書かれたボードをもったままぐったりとうつむいています。

と書かれたボードを手にもったままかたまっています。

龍は両腕を脱力させ、下ろした状態で低く構えた。



彼の右頬がわずかに釣りあがる。

ふいに殺気をまとっていく——

彼の両腕がまるで別の生き物のようにうねりを上げた。

そのさまはまるで四肢の無い爬虫類のようだった。