-------ああ、そうそう
それはそれとして、悪いが先に戻っててくれ
俺はこっちで用事ができた。なに、後でちゃんと追いつくさ-------------------





水辺での一戦のあと、おそらくは予定通り地下牢に向かっているだろうケンドリックさんやユメちゃんたちと合流しようと歩き始めたとき。

彼、シーガル・ダブルフックは立ち止まり俺にそう告げた。


シーガルさんが見つめていたのは水辺の奥の方、ニエトさんに聞いた話だとあそこはそのまま進めば海に続いていたはずだ。


一緒に旅している間
時折寂しげに、それでいて愛おしそうな目で海の方を眺めていた彼は
この時は既にその瞳に強い決意を宿していた。








・・・・・・きっと決着をつけにいくのだろう。

鯨捕りでありながら、陸に揚がらねばならなかった理由との決着を。


シーガルさんはあまり昔の話をしたがらない。
それゆえ、詳しくはわからないが・・・・その瞳を見るに俺がついてくるのは無粋だと感じた。


無論心配である、出来ることなら非力な自分でも何か手伝えないかと問いたいが・・・

「男が決着をつけに行く時に、半端な優しさは邪魔なだけだ」

師匠の言葉を思い出す。
きっと今がその時で、だからこそ今は俺がついて行けば決意の意味をなくしてしまう。

無言で頷き地下牢へ続く枯れ地へ向かう間

一人、海に生きる男の生還を祈るのだった。

外套の襟を合わせながら前に出た。

座り込み、ずれた帽子をかぶり直している。

いたずらな笑みを浮かべ、帽子を外し一礼した。