実のところを言えば、俺は意外と砂地が好きだ。
だが地下牢は大嫌いだ。
この二つはどっか似ていて、けれどどっかが決定的に違う。

簡単に言えば「終わり続けている」か「かつて終わった」かの違いなんだろう。
過酷さなら枯れた土地の圧勝だ。
だが不毛の地ではあるが、ここにはある種の生気・活力がある。
殺意に満ちた環境もそれはそれで健全だ。
それは生きていくこと・乗り越えることができる過酷さだからだ。
空虚はすでに過去のことで、行く先に薄ぼんやりとしているが確かな未来を感じられる。
厳しくぶつけられる熱砂を耐え切れば青空が広がっているのだ。

一方で地下牢は陰鬱だ。
枯れた土地のような過酷さはないが、同時に一切の熱もない。
暗く閉ざされた空間は未来を予期させず、前へ進む意志だとか、羽ばたこうとする軽やかさを奪っていく。
鎖につながれるとはそういうことだろう。
その場に縛り付けられただただ重くなっていくばかりなのだ。
それでもってそれは「終わり」じゃあない。
前に進むことができないのに、先に待ち受けている終わりを見続けることを強要される。
迫りくる終わりから逃げることも、あるいは向かって行くこともできずに。

……ただ一つだけ思うことは。
たとえば俺が牢に放り込まれたとして。
それでも窓さえあるならば。
そこから月が覗くのならば。

旅を続けることができるのかもしれない。

＞PTメッセージ

自然(霧)が変質した生き物とも言えるユメはアンデッドと言う歪な存在は遠くに居てもひどい嫌悪感を感じるようです

外套の襟を合わせながら前に出た。

座り込み、ずれた帽子をかぶり直している。

いたずらな笑みを浮かべ、帽子を外し一礼した。