—航海日誌十四日目—

酔いの覚めたキーシュ、たまたま一緒になったニエトとルーシアに別れを告げ、一人で水辺の奥へと向かう。
目的は当然、帝王イカの打倒である。
なんとなく、俺はそこに行かなければならない気がした。
そうしなければ、俺は永遠に前に進むことはできないのだろう、と。


それはそれとして、先日フラウなる雪女と契約した。
……したのだが……

決意に満ちたシーガルの表情を見て
キーシュは、言いかけた言葉を引っ込める

そしてしっかりと彼の瞳を見据えると、ゆっくりと頷いた

デカい。
というのが、素直な感想である。
もしこいつが沖で鯨と格闘すれば、それはもう派手な争いになるのだろう。
なんとなしにそんなことを考えつつ、銛を構える。

呼び起されるのは、漁の感覚。
巨大な水棲生物を相手にする時独特の高揚感。
潮の香りが感じられないのが、ほんの少し残念だ。

勝った。
勝った、勝った、勝った！
帝王イカの断末魔の叫びが、勝利を讃えるファンファーレにすら聞こえる。

懐かしい。
かつて海の上で何度も感じた、ジャイアントキリングの手応えだ。
大きく息を吸って、勝鬨を上げる。

空気を掃うように、足早に歩を進める。