「……どうにも、調子が悪い……」
「むー？　風邪かー？」
「いや、体調は万全だが……術式の方が少し、な。前よりも安定に時間がかかるというか……」

試しに、小さな火を生成する。
ゆらゆらと揺らめき、その勢いは不安定だ。

「魔力のバランスの問題……か？」
「いや、その道に関してさっぱりぽんなオレ様に聞かれても困る」
「そうか……」

「ああでも、あのトラ公なら何か分かるんじゃねーの？
　昨日も『我が右目に宿りし≪万物の（以下略）』とか騒いでたぜ？
　ああそうそう、オレ様のことを『正の塊』だの『負が欠けている』だのぬかしてたっけ。
　『半分の力しかない』とも言ってたな。あー、思い出すだけでぶん殴りたくなってくるぜ」

トラ公……ああ、うちのホワイトタイガーのことか。

「あいつなら、今朝方尋ねてきたよ。
　『我が主は負の力に傾きつつある。努々お忘れなきよう』と言い残して、狩りに行ったけどな……」
「なーに考えてんだかねえ。ドストレートに話してくれりゃあ良いだけどよー」
「その点については同意、だな。別に、ああいうのが嫌いってわけじゃあないんだが」

魔力の傾き、か。
深刻になる前に、何か策を考える必要がありそうだ。
強まって均衡の崩れた力の一部を他者に譲渡するか、或いは弱い方の力を取り入れるか。
どちらにせよ、負担を考慮して選択をしなければならない。

（この二つの手段なら……鍵になるのは『コイツ』、か）