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その日、人形は変わったものを手にしていた。
金ぴかの立方体のようだが……

人形は切れ目のはいった立方体を、切れ目にそってまわしたりして見せている。
私は詳しくないのだが、どうやら「ルービックキューブ」という物らしい。
本来面には色分けがされている物らしいが、人形が持っている物は全面金色のため、
色分けの代わりに彫り物の模様が施されている。
輝く金の立方体に彫り物が施されているのは、パッと見芸術作品にも見えるのではないだろうか。

金の鎧はというと、いまいち表情のつかめない顔でその立方体を見つめている。
そしておもむろに人形に歩み寄ったと思うと、立方体を貸してくれとせがんだ。
人形は特に断る理由もなし、金の鎧にそれを差し出す。
しかし人形の言うにはこの立方体はなかなか高度なパズルらしく、「闘争馬鹿のテメェに解けるかね」と小馬鹿にしている様子だった。

金の鎧は物珍しいのか初めは立方体をしばらく観察していた。
しばらく観察したのち、立方体の切れ目にそってまわし始める。
やはり金の鎧はパズルなどやったことがないのだろう。
顔を隠しているために目線は読めないが、ほとんど立方体を見ていない気がする。
何やら手探りで感覚任せにまわしているだけに見えて仕方がない。
本来こういう物は考えながらいじらなくてはならないのでは？

そんなことを思っていた時、

私は耳を疑った。
私だけではない、その場にいた人形もまた驚いた眼をしている。
金の鎧が、できたなどと言い出したのだ。しかも先程から数分足らずである。

私達は金の鎧の持っていた立方体を凝視する、人形もまた同じく。
しかし確かに立方体の模様はすべてそろっていた。

人形が質問したが、この立方体を解いた当の本人はどうもきょとーんとした顔をしている。

金の鎧はなぜか困った顔をしてしまったし、人形も釈然としない表情のままだ。
はたして偶然なのか？これが意外な才能という奴なのか？
少し後のことだが、この立方体を解くことが本当に困難なのか確かめるために
私も解こうとしてみたのだが、案の定投げてしまった。

人形は少し考え込んでいたが、すぐに調子を戻していつも通りになった。

金の鎧もいつもの調子に戻っている。
いやはや、金の鎧の意外な一面を見てしまった。

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To be continued...

とうとう痺れを切らし、振り返って怒鳴りつける。

少年は盟友アニマ殿に興味を持ったらしい。

「『原石』……成程、未だ輝かぬ石塊か」

路傍の石、と揶揄する言葉は、金楊の真剣味を帯びた表情を前になりを潜めた。
同じだ。この表情は、あの時と同じ物。
かつて言葉を交わした際に、『己の名』を掛け替えのないものと告げた時と、同じ顔をしている。
そうか。洒落や諧謔でなく、貴様はコイツをそう捉えているのか。その内に、何かを見たのか。

「貴様が言うのなら、そうなのだろうな。金楊」

男の顔から、常の嘲笑が消え失せる。
これは、義理だ。己が認めた者へ払う、敬意の一形態。
回す視線。二人の間に割り込んで来たドールに、僅かに『異なる驚愕』を浮かべた瞳は、そのままユリアへと向けられて。

「貴様を認め、貴様の言葉は信じよう。
だがな……

腕を組んで、うんうんと頷いている。

アニマはちょんちょんと何かを指し示している。

深呼吸をひとつ。