「くっ……」

　己の身体から鎌を引き抜いたレーネフィアは、体躯には不相応な獲物に引き摺られるように糸の結界の中を躍る。
　その度に可憐なドレスは裂け破れ、贋作された身体は削られていく。

　一進一退。
　しかしその実態は、詰みをできるだけ遠ざけるための悪足掻きに過ぎない。

　放つ攻撃は弾かれ、砕かれ、届かない。
　踏み込む足は糸に掬われ、阻まれる。
　振り払う鎌は防がれ、鈍ってゆく。

　——それでも、彼女の足は止まらない。

　ミラルカは十字架を手に握り——、自身の胸に突き刺した！


　　　　　　　——スキゾジェネシス！

　穿たれた心臓から流れ出る血液は霧散し、黒い霧となって辺りを包み込む。

　霧はやがて眩い光となり、翼のように肩から広がった。