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　図書館の中で椅子に腰掛け、『吸血鬼カーミラ』と書かれた本を閉じるミラルカ。
「……やっぱり。おかしい」
　そう言うと袖口から、蛇となったリリスが顔を出し問いかける。
「おかしい？　何がおかしいのかしら」
　少年はそんな質問を無視し、真剣な表情で言葉を紡ぐ。
「ねえ。リリス。《読み手》って言うのは、本の中の登場人物のような力を使える者のことなのだよね？」
「そうよ。カーミラは優れた読み手だったようだから、物語に登場する吸血鬼の力を、そっくりそのまま使うことが出来た」

「じゃあ。やっぱり間違ってるよ」
「……？」


「ミラルカは最初から、『吸血鬼カーミラ』なんて本、読んでいなかったんだ」


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　瞬間。
　辺り一帯の地面から、無数の骸骨が二人を取り囲むように隆起する。

　ミラルカは帽子を脱ぎ捨て地面へ投げると、一度息を吐いた。

　骸骨は一歩。また一歩と接近して来る。

　ラフィンは腰に付けた手榴弾に手をかけると、骸骨を睨み付ける。

　骸骨の腕が、ミラルカの心臓を穿つ。
　すると全身から黒い霧を放出しながらその場に崩れ落ち倒れこんでしまう。

　そう言って、ミラルカは、息を引き取った。

音を立て、ユズリハの横の空間に、人型に影が持ち上がる。

黒い笑みのまま、そう言った

　ミラルカは十字架を手に握り——、自身の胸に突き刺した！


　　　　　　　——スキゾジェネシス！

　穿たれた心臓から流れ出る血液は霧散し、黒い霧となって辺りを包み込む。

　霧はやがて眩い光となり、翼のように肩から広がった。