かわいいよりは、かっこいいと言われたい。
バニラはそんなこと言ってみせるが、もうその言動がかわいいのだが。

ここでふと会話の流れを思い返すリータ。
勘違いしているのはピアンタだけである。
そう、これは髪を切る話のはずだ。

なお、実際未経験の模様。

自分の後を追ってくるポポロの言葉を聞きながら、社長が思ったことは「言葉を間違えたな」だった。
ポポロという存在を否定し認めなければ、その心に多少の傷を負わせられると考えていた。しかし彼女に傷ついた様子はなく至って平素そのものだと社長には見えた。
その様子は、むしろ社長苛立ちのほうが大きくなり、それに比例するように彼の歩く速度は早くなった。

と、社長は歩みを止めずに、嫌でも入ってくる彼女の言葉に返事をする。しかし同時にこの問答に意味は無いだろうとも考えていた。

そう、誰が言うかなのだ。社長がポポロをバケモノと罵ったところで、彼女は揺るがない。
もし自分の言葉が、あの眼帯をした少女が言ったのならば、また違ったのだろうなとも社長は考える。

社長がそう考えたタイミングで——

ポポロの口から「ゆるーくいきましょう」という言葉が発せられた。
無自覚かつ無遠慮なその一言に、社長はピタリ歩行を止める。

いい加減ぶん殴ってこの場を立ち去ろうと思ったが、しかし果たして「このバケモノ相手に殴打は効くのだろうか」という思考が社長の右手を止める。
彼女を殴ったところで傷つかないだろう。肉体的な意味でも、精神的な意味でも。それは疑問というよりも確信だった。

——だったら、違う相手を殴ったのならどうなるだろう。
そう、彼女が誰よりも大切にしている存在を、傷つけたのならば。

社長は伏せていた顔を上げ、ポポロのほうに向き直り、こう続けた。

社長はそこで大きく息を吐く。

と、社長は淡々とした様子で告げる

ポポロは……といいかけたのに首をかしげ、何か聞こうとしたフィオナ。

しかしポポロの勢いに、言い出せないままタンポポ荘についてしまったようだ。

思わず口を開けてタンポポ荘を見上げている。上を向いたことで少しフードが捲れ、より顔が見えるようになるが、本当にぽかんと口を開けてしまっている。実にまぬけな顔だ。

思わず顔を向けて質問してしまった、ポポロの思う壺である。

そう言いつつも体は正直であった。部屋を見たくてしかたがないのかそわそわしている。スカートから尻尾がはみ出しているが、犬のように揺れている。もはやタンポポ荘の虜のようだ、だいぶ気になっているらしい。