メルンテーゼの昼下がり。

言わずと知れた、町外れの屋敷。

その台所で、

いつものように、スイーツ作りに勤しむ主夫、もとい執事。



クッキングシートの上に広げられているのは薄力粉。

キツネ色になるまで炒りつけ、粗熱を取ったものだ。

それをアーモンドプードル、シナモンと合わせ、ふるいにかける。

ちたぱたと羽ばたくのは小竜、シャルラッハロート。

手際よく動く主の邪魔にならぬよう、粉を吹き飛ばしてしまわぬよう、

主の頭よりも高い位置から覗き込む。

初めのうちは不敬ではないかと内心冷や汗をかいていたようだが、

ガルはそのようなことを気にする小器ではなかった。

薄力粉を冷ましている間に、バターと粉砂糖を練り合わせ、更に卵黄を加えたペースト。

そこに先ほどふるった粉を入れ、丁寧に混ぜ合わせる。

クッキーとは、大体において、バターの比率が高くなるほど、口当たりが軽く、

つまりはサクサクになる。

よくあるサクサククッキーを作る際、バターの分量は小麦粉の約半分程度である。

しかしこのポルボロン、小麦粉とほぼ同量のバターを使用しているのだ。

粉気がなくなったところで生地をまとめ、板状に伸ばし、型で抜いてゆく。

女性もいるので一応フォロー。

型抜きした生地を天板に並べ、粉砂糖を振り掛ける。

あらかじめ熱しておいたオーブンへ入れ

おそらく、30分足らずで焼き上がるだろう。

茶の準備をしていればすぐである。

口ぶりとは裏腹に、気温や寒暖の概念に捕らわることのない祖竜と、

元々砂漠の生まれで、幼いといえどむしろ夏場こそ快適な火竜。

オーブンから甘い香りが漂い始める昼下がり。

台所で２頭の会話が弾む中、

リビングでは暑さに弱い木竜と猫がくたばりかけていた。

*何かを発見して嬉しそうだ*