「水の音が落ち着くのは条件付きだと思うの」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　———— 排水口




　悪夢を見たような気がする。すっきりと起きられないのがその証拠。
　目を開けるとコノエの胸元が見えて、背中と頭に腕が回されていた。
　ひんやりとした体温。耳と尻尾を撫でる大きな手。
　やっぱり悪夢を見ていたらしい。反射的に身構え、動物的特徴を出したのだ。

「おやすみなさい」

　言われるまでもなく再び瞼を落とす。時間はある。いくらでも。
　夢見の悪さは地下水路の淀んだ空気のせいだろう。空気はやっぱり大事なものだと微睡みの中で思った。

ちぎれんばかりに尾を振る犬のような勢いで駆け寄ろうとする。

　　　　　　男はそっと指輪に口づけた。