※　某ロールチャットからの続きです。
　　 ENo.696　闇豹さんをお借りしました。



自身の身体の変化にパニックを起こし、喫茶Impurityに駆け込んだのが１時間前。

事情を説明し、店主・闇豹の部屋に案内され、ソファに座らされたのが数分前のこと。



膝の上にはミニドラゴン、シャルラッハロート。

さらに奥の部屋からは、

「ジーンズがいいかなー。　いや、キュロットかなー。　ミニも捨てがたいなー。」

ああでもない、こうでもない、と悩む部屋の主の声。

自分も女性化しているとはいえ、若い女性の部屋をまじまじと眺めるわけにも行かず、

落ち着かない様子でソファに腰を下ろしたまま、身動きの取れないガルだった。

案内される前の口ぶりから、おそらく自分に合う服を選んでくれているのだろうが…

「よっしガルやん、もっかいスタンダップ。」

腕に色とりどりの服を抱え、こちらに戻ってくる闇豹。

「は、はい…。」

喫茶店スペースでも同じ言葉で起立させられ、多大なセクハラを受けたため、身をこわばらせたガルだが、

逆らうこともできず、おずおずと立ち上がれば、

「はいコレ。」

着てみそ、と服を渡された。

「ガルやんっていっつも青い服着てるけど、他の色も似合うと思うんだよねー。」

青ばっか着てるとバレそうだしねー、と空になった腕を組む。

「え、えっと…、ここで、着替えるのですか？」

渡された服が皺にならないよう、そっと抱えながら、首をすくめる。

自身も女性体ではあるが、若い女性の目の前で、服を脱げと言うのか。

「隣の部屋で待っててもいいし、玉のお肌見せてくれるなら喜んで見せてもらうよ？」

組んだばかりの腕を解き、腰に当て、胸を張る。

「お願いですから待っててください。」

即答で返せば

「じゃぁ見ててあげよう！」

仁王立ちとは裏腹に、とても柔らかな微笑みで即答し返す闇豹。

「そ、そうじゃなくて…！」

別室で、と入れなかったあたり、ガルにも落ち度はある。

が、ソコを突いた発言であろうことは明確である。

逡巡の後、

仕方ないので

「…別室、貸してください。」

折れた。

「いつ言うかと思ってた☆」

そのままかんらかんらと笑い

「じゃ、ソコ。」

彼女が出てきた、奥の部屋を指差す闇豹。

「クローゼットになってるから使って。」

「はい。　ありがとうございます…。」

完全に遊ばれていると分かりながらも、礼儀正しく小さく頭を下げ、示されたドアの先へ。

「シャルも、待っててくださいね？」

一応、シャルにも待機するよう命じ、ソファへ置いておく。

どこか残念そうに見えたのは気のせい、と言い聞かせながら入った先は、ウォークインクロゼット。

…と呼んでいいものか、

女性の全身など余裕で写るであろう、巨大な鏡の存在感に感嘆の息を漏らしつつ、受け取った服を適当な所に置く。

自分の身体と解ってはいるものの、女性の裸身など見慣れていないため、鏡に背を向け、帯を解く。

ふと、甘い香りに顔を向ければ、アクセサリー箱の中の青薔薇に目が留まる。

どこか見覚えのあるソレに首を傾げた拍子に、視界の端に鏡に映る自分の肌を捕らえてしまい、慌てて目を逸らす。

静寂の中、衣擦れの音だけが響くこと数分。

渡された服に着替え、ようやく鏡に向き直った瞬間

「着替えたー？」

「ひゃあああっ！？」

外で見ていたのではないかと言いたくなるほど完璧なタイミングで、背後のドアが開けられた。

「んー…、なんか違うなー。」

待っている間戯れていたのだろうか、片腕にシャルを抱えたまま、不服気に首を傾げる闇豹と

「そうですか？　軽やかでお素敵だと思いますよー。」

大人しく抱えられたまま逆に首を傾げるシャル。

生返事で改めて鏡を見れば、腰でシェイプされた花柄のワンピースに薄桃色のニットカーディガンを羽織った、

蒼髪の女性が写っていた。

今日になるまで忘れていたもうひとつの姿で、今までに着たことの無い色を着ている自分に、

「これは、本当に私なのでしょうか…？」

すっかり放心状態のガル。

「ほっぺた全力で自分殴りすればわかるよ☆」

「…しませんよ。」

闇豹の言葉に、鏡の向こうの女性もため息をついていることで自覚する。

「じゃ、次行ってみようか♪」

伏せていた視線を上げれば、その腕にまた別の服を渡され、

…あぁ、これは着せ替え人形にされたんだな。

女性のお洒落に時間がかかる理由を、その身で以て学習したガルだった。






もちろん、これが序章にもならないことなど知る由も無く、

何度も見慣れぬ女性の裸身を視界の端に入れなければならないということに気付くのは、数分後のことである。

＞カーフェイさん

怒りモード継続中。
否、最悪のタイミングでやらかしてしまった、と言うべきだろうか。

数秒ほど、たっぷりと間を取って二言目を告げる。

分からないなどとは言わせない、と言った雰囲気である。

のほーんっとしたまま。

*何かを発見して嬉しそうだ*