———それであなたはソレから逃げたのですか？

「……」

———あ、いたいたたたたたっ！！前足でじわじわと押さえつけるのは両側がいたいです！！

ばたばたと振られる4つの手足。時折、小さな火花がちるが難なくかわす。

———ううぅぅぅちょっとした冗談だったのに……。

「覚えとけクソガキ。人生の先輩からの有難い御言葉だ。世の中には言っていい事と、脳天ブチ切れて思わず喉元に噛付きたくなる事を言う奴がいんだよ」

ぐったりと力の抜けた胴体から金属の腕を退かす。
ふぅ、と一つ鼻息をつき、彼は今日の話は終いだとでも言いたげに、伏せていた身体を起こし、座る態勢を取った。
そして上下の圧から解放された火蜥蜴は、何度か身体を動かした。

———それって今のおじさん達の事ですか？

「……何でそう思ったんだ」

———だっておじさん、ずっと謝ってる。でもそれが蒼い彼をもっと怒らしてる。
おじさん、何でそれが分からないの？おねえさん、おじさんの奥さんなのに何で止めないの？

「さぁ。俺に聞いても知るかよ。夫婦と言っても色々あるんじゃねぇか」

———おかしいよ。おじさんが悪いけど、コレは違うよ。おじさん、このままじゃ、全部全部、憎まれて今までのこと、なかった事にもされちゃうよ。

電子の床。感触があるが、土と草とは違った感触の床は、いくら火蜥蜴が地団駄を踏んでもびくともしない。

———だめだよ。おねえさんもだめだよ。おねえさんも、絶対さびしいよ。

さびしい、とこの小さな火蜥蜴は言う。
根拠も、理由もない曖昧な言葉。何に対して怒っているか正確にこの火蜥蜴には理解していない。だが、確信を込めながら燻ぶる炎は、小さな炎は憤慨に赤く燃え猛っていることはわかっていた。

———ぼくは決めました。ぼくはおじさん達の味方です。ぼくだけでもおじさん達の味方でいます。おじさんとおねえさんをかなしませないふたりの味方になります！
それが僕の願いです

「……そうかよ。ま、お前の様な小せぇクソガキが出来るのは限られてるが、精々俺に潰されねぇくらいになるんだな」

———むっ！見ててくださいよ、ぜったいあなたより2メートルおおきくなってみせます

「いや、それはデカすぎだろう……」

広い空間を取っているこの場所であるが、じわじわと熱くなってきてるのを彼は感じた。
ふん！と勢い良く鼻の穴から噴煙を上げながら一層身体の炎を巻き上げる、とある場所へと進んでいく。
それを彼はやれやれと言った風に、身体を動かした。
鋼の音色が彼の動きによって、空間に小さく響いいていく。
未だ歩調の小さな火蜥蜴の後を追う様に、ゆっくりと彼も歩き出して行った。

＞ご主人

＞カーフェイさん＆ルーチェさん

そして、と今度はルーチェに向き直り

それだけ言うと、一同に背を向け、食事の支度に取り掛かる。

焔はコインに当たって真っ赤にする。触れると熱そう。

ごそごそと懐から1枚のカードを出せば、

一瞬にして狼ぽい犬ぽい生物を抱きかかえた状態に。

*何かを発見して嬉しそうだ*

きょろきょろと、青年は周囲を見回すのであった。