父と母を同時に無くし、途方に暮れていた子供が居た。
その子供はあまりに無力で、ただ両親の墓前で立ち尽くすしか無かった。
そんなある日、あの人は現れた。

「あら、アンタこんな所でどうしたの」
「……わからない」

旅の女に話し掛けられた子供は、遠くを見ながら呟くようにそう答えた。

「…嗚呼、この辺りは性質の悪い病が流行っていたらしいから、それね…」
「なんでしってるの」

ふと子供の前にある物を見た女が、そう呟くように言葉を紡ぐ。
そこで漸く子供は女を見た。
蒼い、不思議な髪の色。 藍の色を宿した、意志の強そうな瞳の女性だった。

「私はね、この国をあちこち旅して回っているの。 だから、色々な情報が入って来る」
「それじゃあ、おねえさんはものしりなんだ」
「…まぁ、それなりには」

子供は、暫く振りに話をしてくれる人間に驚いていた。
けれど、それも最初の内で…聞けば答えてくれる女性に懐き始めていた。

「…なにをすればいいか、わからないの」
「……流行病で、両親を亡くして？」
「…うん。 みぎのめも、みえなくなっちゃったし」
「アンタも流行病に罹ってたのね…。 で、治ったけど右目は見えなくなった…と」

女の言う事に、子供はこくりと頷く。

「…君、名前は？ 他に家族は居ないの？」
「……みふね。 とうさんとかあさんいがいは、しらない」
「そう…」

黒い髪と紅い目の男の子が、藍色の瞳を見上げていた。

後ろに気配がする。
気がつくと緑色の髪の少年が後ろにいた。
少年はずっと大太刀をみているようだ

その後ろから、赤い影のようなモノが少年に話しかける。

おそらく少年のエンブリオなのだろう。

ロズと呼ばれた少年は我に返ったようだ。慌てて向き直ると

おそらく太刀の類いを知らないのであろう。いろいろと聞いてくる。

……どう見てもエンブリオの方が遥かに保護者肌だった。

そう言ってガルボは立ち去った。
きんつばは一つも残されていなかった……。

ハサミを鳴らしている

なぜかハサミを鳴らしている

ハサミを鳴らしている