○月　○△日　快晴

　私とレンドランさんは平原にいきました！

　平原に行きたいと思ってた所に、運良く平原に連れてってくれるって人が声をかけてくれたんだ。
　その代わり、イオちゃんとアンジェさんがその人たちの仲間を別の所に案内する事になったんだけど。
　だから今日もまた私たちは別行動でした。

　ちなみに、今日平原へと来たのは、ここに出るって噂の狼さんとエンブリオ契約するためです。
　とても可愛いって聞いたから、会ってみたくてやってきたのだけど、なんだか倍くらいの数に囲まれちゃった。
　それなのに狼さんの姿はなかなか見えなくて、あえないのかなぁと思っていたら……

……いました、狼さん！

　噂通り可愛くて、くわえた稲穂がきらきら光っていました。
　そんな狼さんと契約するには、まず、一度倒さないとだめなんだけど……。
　いくら何でも倍の数は危ないんじゃないか、って思っていたら、

　なんて、レンドランさんはかっこいいドラゴンさん呼び出しちゃうし、連れてきてくれた人たちはとっても強いしで、驚くくらいあっさり倒せちゃったのでした。

　というわけで、早速狼さんと契約したんだけど、さっそくみんなに大人気の狼さんだったよ。
　天使さんもアルラウネさんも、二人で抱きついてもふもふしてたし、ハニワさんは狼さんと一緒にふしぎなおどりを踊ってたし、妖精さんは狼さんの頭の上だし。
　あの駄馬は関心ないみたいだけど、蛇さんは狼さんの周りをうろうろしてて面白かったよ。
　ミニドラゴンさんはそれをちょっと離れて見て笑ってたし、人魚さんは……いつもと変わらなかったけど。いつも通りぐったりぐったりしてました。

　そんなだから、みんな早速仲良くなれたみたいで、なにも心配はなさそうでした。

　連れてきてくれた人たちにお礼を言って別れると、私とレンドランさんもまた別行動です。
　レンドランさんはイオちゃん達と一緒に、あの地下牢へ。
　私はまた、一人で森へと向かいます。

　明日はロベリィちゃんとまた合流して、ホワイトタイガーさんを探しに行きます。
　ちゃんと見つけられるといいなぁ〜。



【メモ１．並行次元世界について】

　私たちの存在する世界の隣には、ほんの少しだけ違ったよく似た世界が存在します。

　隣あって存在しているけれど、交わらない世界。
　それが、並行次元世界です。

　それは同じ次元、同じ時間に存在するのにも関わらず、互いを認識することはできません。
　二本の平行に並ぶ紐をイメージすれば、それがそのまま並行次元世界の形と言えます。

　糸をより集めて作られた紐を、様々な小さな世界がより集まってできたものだとして、それと平行して並ぶのは、また同じような構造をもった大きな世界です。
　ただ、糸に当たる小さな世界同士は、行き来も交流もできるけれど、紐と紐の間には接点が存在しない為に通常は自在に行き来も交流も出来ないと言うのが通説になります。

　けれど、その並行次元世界は、『可能性の分岐した世界』とも考えられていて、一瞬一瞬の判断の違い、行動の違いによって分岐した、例えばの世界だと言う人も少なくないです。
　バタフライ効果のようにほんの些細な事で世界が分岐してしまうのですが、その分岐した世界とはやはり、交流は出来ないと言われています。

【メモ２．時間移動について】

　過去、現在、未来を一本の線の上に置いて、その線上を移動する事が時間移動です。

　以前は時間を自在に移動することは不可能だとされていたのですが、『時渡りの精霊』と呼ばれる存在が発見され、その精霊が扱う時間移動の魔法を解析、研究した結果、けして不可能な事ではないとされました。

　その研究成果を元に作られた時間移動の魔法は、莫大な魔力を必要とするものの、過去や未来への移動に成功し、今の研究の基礎を担っています。

　と、時間移動には成功し、今も研究がなされているのですが、自由自在に移動が行える訳ではありません。
　時間とは、絶対的に存在する万物共通の概念と、人それぞれに存在する固有のモノがあるのだそうです。
　私たちは前者を『世界時間』後者を『主観時間』と呼んでいます。
　通常は、世界時間と主観時間にズレはないので、その違いを意識する事はないのですが、時間移動の際にはその全く別の二つの時間によって、ちょっとした制限が発生するのです。
　それぞれがどういった時間なのかは、時間移動のルールを説明する事で理解できると思います。

　※１．過去への移動
【過去】　Ｂ（移動先）　Ｃ（Ｂ＋１０日）　Ａ（現在）　Ｄ（Ａ＋１０日）　【未来】

　これは、時間移動によって現在から過去へと移動し、可能な限り移動前の時間へ戻ろうとした場合の一例です。
　まず、Ａから魔法によってＢ時点へと移動が行われます。そして、移動後に１０日の時間を過ごしました（Ｃ時点）。
　そして、Ｃ時点から元居た時間へ戻ろうとします。すると、移動できるのはＡ時点に１０日を足した、Ｄ時点以降になるのです。

　※２．未来への移動
【過去】　Ａ（現在）Ｄ（Ａ＋１０日）　Ｂ（移動先Ａ＋２０日）　Ｃ（Ｂ＋１０日）Ｅ（Ｃ直後）【未来】

　これは現在をＡ時点として、未来へと移動した場合の例です。
　Ａ時点から２０日後のＢ時点へと移動し、１０日を過ごした後（Ｃ時点）、可能な限りＡ時点付近へ戻ろうとすると、Ａ時点に１０日を加えたＤ時点になります。
　それからさらに１０日を過ごし、Ｂ時点と同じ時間まで進むと、突然に時間移動が発生し、Ｅ時点にまで強制的に移動してしまうのです。
　これは過去へ移動した場合も同じです。

　※３．過去への移動その２
【過去】　Ｂ（移動先）　Ｃ（Ｂ＋１０日）　Ｄ（Ａ−１日）　Ａ（現在）　Ｅ（Ａ＋１１日）　【未来】

　例１と同じように過去へ移動し、Ａ時点の一日前にさらに移動をした場合の例です。
　Ｄ時点までは問題なく移動が出来るのですが、Ａ時点にさしかかった途端、Ｅ時点まで移動させられてしまいます。

　例２及び例３にて起きる強制的な時間移動は、『世界時間』と『主観時間』のズレによって発生するのだと言われています。
　二つの時間は、原則的に同期していなければならず、そこにズレが生じると、つじつまを合わせるように修正がされるのです。
　さらに、一度時間移動で過ごした時間にはもう一度存在することは出来なくなってしまいます。
　その理由についてはまだ研究中で解明されていません。

【メモ３．私と『もう一人の私』】

　リセットに備えて、新しく付け加えて置かないといけない事があります。
　それが、平行次元世界に存在する、『もう一人の私』についてです。

　彼女は、あの15歳の誕生日で私とは違う選択をし、その結果、私とは異なる人生を歩む事になった、一つの可能性です。
　彼女の存在が並行次元世界の存在を裏付け、可能性の分岐である、という説を強く後押ししています。
　ただ、彼女の人格には非常に問題が——



「なーにやってるのかと思えば、また面倒な事をしてるのね」

　私が新しいメモを書いていると、今一番聞きたくない声が聞こえました。
　うんざりしながら振り向くと、ベッドの上に私と同じ色の髪を靡かせた、憎たらしい事にスタイルの良い女性が座っていました。
　……というか、この細いくせに出るところは出てる大人のエルフこそが、『もう一人の私』だったりするのだ。

「……わざわざ、こんなところまで何しに来たの」

「何って……暇つぶしだけど？」

　首をかしげながら当然のように言う彼女に、米神が引きつります。

「仕事はどうしたの」

「いつも通りシアに任せてきたわよ」

「さっさと帰って働け、駄女王」

　……こんなのが、私の可能性だと言うのだから、憤りも感じれば、泣きたくだってあります。
　普段からこうして、女王の仕事を放り出してごろごろぐうたらしたり、遊び歩いたりばかりで、彼女もまた自分なのだといわれても、到底受け入れられないような有様です。
　ちなみに、毎度仕事を押し付けられるのは、何十年後かに生まれるらしい、私の最後の妹だそうです。

「もう、相変わらずツレない態度よね。私の癖に、なに真面目ぶってんのよ」

「そっちこそ、私のはずなのに、どうしてそんなにいい加減なんですか……」

　あぁ、本当に認めたくありません。
　一歩間違えれば自分がこうなって居たなんて、考えたくもありません。

「見解の相違ね。私にしてみれば、貴女のほうが不自然なんだもの。まぁ、これも未来を得たか、過去を得たかの違いなんでしょうけど」

「過去を捨てたか、未来を捨てたかの違いじゃないんですか」

「『得た』のよ。やっぱりまだまだ子供ね、『私』？　あぁ、ずっとそのままなんだっけ」

「……喧嘩がしたいなら、お兄ちゃんところに行ってください。私は今、そんな暇ないんです」

　そう言って、メモを日記帳に挟み込んで立ち上がりました。　
　そのまま、『私』の事は無視して部屋を出て行こうと思ったのですが。

「まぁ待ちなさいって。今日は一応、『私』に用があって来たんだから」

「……なんですか」

　いい加減うんざりして私が振り向くと、ベッドの上の『私』は、どこか楽しげに笑っていました。

笑った瞬間、周りに満開の花畑を錯覚するほどに明るい笑顔の挨拶だった。

なんだか随分混乱している様子。

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喜んでたくあんをこりこり食べる謎ねこぞくたち。ねこざかなは鱗をばら撒いている。

よくわからない濁し方だ。

　

　

　クロエはティアから耳を触ってもいいと言われると、大喜びしながら近づいてきた。

　ティアのすぐそばまで来ると、恐る恐る右耳に手を伸ばす。

　クロエは感触が気に入ったのか、ティアの右耳をふにふにしている。

　クロエはそのままティアの後ろに回り込み、今度は左耳に手を伸ばした。

　クロエはそんなことを言いつつ、ティアの両耳をふにふにしている。

　クロエは悪戯心が目覚めたのか、そのままティアの右耳にふーっと息を吹きかけようとしている！

私のこと知らないよねって質問に頷きつつ

ロベリアの表情が少し厳しくなる。