前日談


曇天の街中を、ただ歩いていた。
明日に何も見えない中で、何かを探すように。

生きていく事には困らなかった。
金はクズ共から奪ったし、野宿には慣れていた。

奪って、食って、寝る。仲間を失ったあの日から、ただそれだけの日々が続いていた。

強く激しい雨の粒が、X-13の全身に降り注ぎ始めた。



X-13は雨に濡れることも厭わず、何処に続くのかもわからないような道を歩き続けている。


「おじさん、風邪引いちゃうよ。こっち来て雨宿りしなよ」

X-13をおじさんと呼ぶ少年の声。
それは、数秒前に通り過ぎた民家の窓から聞こえてきた。

濡れるのは平気だ。故にそのような助けは必要としない。
では何故、X-13が少年の誘いに答えたのか。
それは窓から顔を出した少年が、”怪傑X”の仮面のレプリカを身に付けていたからだ。


次回へ続く。

いきなりたくさんの情報量が与えられて、どれから反応していいか戸惑うように相手の言葉を打ち切ろうと。
一揆、という言葉自体は聞いた事があるものではあるが、それは教科書の中であり、歴史の中での話であり、…つまりは全く自分には縁のない話であり。
あやふやな認識で戸惑うものの、反乱、と言われれば少し納得がいったのか、ああ、とだけ相槌を。

無論、貴方も。そういったニュアンスを含めての物言い。
圧倒的大多数が行っているその行為に間違いがあるわけないだろうと信じて疑わないような、良くも悪くも平和ボケしたとある国の人民の主張をし。

シュウスケは、マントを広げ飛び去る彼の姿を見送る。
その横で名残惜しそうに、フィリアスは小さく手を振っていた。

何やら凄い興奮している。余程珍しいものが見れて嬉しいのだろうか。

完全に目が子供のそれである。非常に興味を抱いているようだ。

サチはふらふらとどこかへ行ってしまった