ジュリの事情を聞くと暫く考えこんで。

ノックもなしに、樹里の部屋の扉が開いた。
走りはせずとも足早に、大股に、険しい表情のカミユが部屋の中央に置かれた棺へ近づいてゆく。

この数日間、見ないように、考えないようにしてきたその姿。
ただ眠っているようだった。しかし、呼気もなければ血の巡りもない。
カミユは今の樹里のような状態の人々をよく知っていた、他でもない——
故郷の、アルームの人々。眠るように死に至る病。天使病。

横たわる樹里——の、抜け殻——の傍らに立ち、膝を折る。
身じろぐ気配のないその頬に触れようとして手が伸びるが、触れる事なく空を切り、引き戻された。

そうして片手に持った小さなオルゴールと樹里の顔とを交互に見やり、
ぎりと小さく奥歯を鳴らす。

わずかに震える指が、青い糸に触れる。
つと持ち上がり、たわみのなくなったところで——しかしまた、指が離れる。

カミユの指先が空中で躊躇う。
一秒、二秒。……そして、再び。意を決したようにその指が青い糸に触れた。

そうして、糸が引かれた。

食事時、いつものように少女が無邪気に語る冒険の内容を楽しく聞いた後にそう尋ねてみる。
一見少女の様子にあまり変わったことはないように見受けられるが、些細な変化でも見逃さないように顔を見つめて。

その直後に少女が突然切り出した樹里の話に大きくどきんと心臓が跳ねる。
しかし表面上に動揺した様子が出るのはなんとか押さえ込み。
椅子から立ち上がるとジュリの傍へ行き、目線を合わせるように膝を突いて屈むと、ジュリの瞳を覗き込んで穏やかに尋ねる。

そしてリオンは何か知ってる？という言葉に同意するように微笑むと軽く目を伏せ。

言いながら首元の粗末な首輪にそっと手をやる。

そして再びジュリの顔を見つめてゆっくりと言葉を続ける。

今の自分なら何か別の方法で彼女を救えただろうか？
あの時の無力感を思い出すと今でも胸が張り裂けそうになり、自然と顔が歪む。

君のことをジュリ、と心の中で呟くと、幼いジュリの身体をぎゅっと抱きしめる。

　　　　　　　　ヤッホーーーーー

　　　　　　　　　　　　ヤッホーーーーー

　　　　　　　　　　　　　　　　カッコーーーーー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　リッポーーーーー

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　キラーインコーーーーー