少女は身の上話を始めた。

どこにでもいる普通の少女として生まれたこと。
とある教団に家族を殺されたこと。
妹と2人で、その教団に拉致され働かされていること。

何もすることが出来ない私達は、ただその話を聞いていた。
そんな言葉で憎しみの炎が消えたりはしなかったが、ただ、私達の中にひとつの思いが生まれた。



　　　『こいつを殺しただけでは　復讐は果たせない』



少女の上にいる、少女をも食い物にしている諸悪の根源を討たねば、恨みは晴れない。
それは"私達"共通の認識だった。

身の上話を終えると、少女は「自分の力になって欲しい」と訴え始めた。
私達にだ。
少女によって破滅し、死に追いやられた、私達にだ。

何故そんな危険な申し出をしているのかは分かっている。
私達が、自分が破滅させた霊魂だと気づいていないのだろう。
近くに居た浮遊霊に語りかけているつもりなのは、語り口から伝わってきた。

ご丁寧に、現世で動くための力も与えてくれると言う。
願ってもない話だ。
いつかその力でお前の首も折ってやろうとほくそ笑みながら、私達はその呼びかけに応え、少女の力を受け入れた。


「ありがとう。これからよろしくね。
　えぇと、名前をつけないといけないわね」

「どうしようかな……そう、プルヴィスはどうかしら。
　あなたにピッタリの不思議で可愛い名前でしょ」

嬉しそうにする様子に少しだけ笑って

ぴょんぴょん跳ねるプルを慈愛の目で見つめている

紙季は猫のカリナを抱き上げると、プルへ手渡した。

プルがカリナに頬ずりをしているのを眺めながら、

紙季は献立をたてるのだった。