キラーウルフの中に宿るアニマが、身じろぎをする。
キラーウルフを介し、ごくわずかな生命力の供給でかろうじて繋ぎ止められているに過ぎないこのエンブリオは、
純粋に宿主への貢献を願っていた。
ただ、加減を知らぬだけだった。

あまりに純粋すぎて、害となっていることには気付かなかった。
今の境遇に不満は持っていない。
エンブリオは主に従うものだから。
主の気配が近くにあって、久々に嬉しかった。
ほんの少し、主に力を注いだ。

眠っている主の呼吸が荒くなる。
顔色が悪くなった。
眉間にしわが寄った。
うめき声を上げた。

嬉しかった。

自分の力に対し反応を返してくる主を感じて、歓喜していた。

繋ぎ止めるだけの生命力しか与えられていないから、力を注ぐことはとても苦しいことだった。
それでもやり遂げた自身が誇らしく思えた。
褒められることを望んでは居ない。
ただそばにあって、力を与えることが出来るだけで満足だった。

夢を見た。
内容はよく覚えていない。
夢を見ていたという事だけを覚えている。
思い出そうとすれば、霧のように掻き消えてしまうような気がする。

カムイを宿したバッドボーイを枕にして寝たのだから、夢見は悪い。
何となくそうすれば対話できるような気がして試してみたものの、結果はわからない。

屍人と魔物、どちらも物騒には変わりないような気がするが……。
少女の獣耳をもふりながらどんどん頬がゆるむ青年。

青年の変わりように戸惑う少女。

ニスイの話を黙って聞いている社長。その表情には笑みが浮かんでいた。
"バカなことやれる仲間がいる"、そういう自分も悪くないなと彼は思う。

よくよく社長を見ると、ニスイの記憶の社長より数年ほど老いたように見えたかもしれない

…………


……


以上が社長とニスイの最初の出会いである

鼻先でゴシゴシしながら丁寧に付加をする。