精霊協会——精霊術と呼ばれる特殊な術式を扱う冒険者達が数多く所属する冒険者支援組織。そしてその精霊協会が大きな力を持つ世界。あの世界にもここ同様、人々の営みがあり、諍いがあった。

志半ばで斃れた友人達、片角の青年、互いを想う余りにすれ違ってしまった姉弟。最後に訪れたのは随分と前になってしまった。今は何もかもが懐かしい。

メルンテーゼに来てから感じていた懐かしさの持ち主がつい先程までここにいたことを、彼女が残した魔力の残滓が静かに語っている。

彼女と最後に会ってから数十年が経っている。彼女の年齢を考えれば現役を退いていてもおかしくはないというのに、今感じられる彼女の魔力はよりいっそう強大に、鋭さを増している。これほどの力量にたどり着くには相当な苦労と努力があったことだろう。彼女は要領よく何でもこなす人間だったが、才能だけでここまでの練度に達することは不可能に近い。

出来ることならば彼女に会って昔話や近況を話したかったが、どうやらすれ違いになってしまったようだ。

彼女が俺に気が付いて避けたのか、今回は運がなかったのか。どちらにせよ会えなかったという結果は変わらない。

それにカルメに殆ど説明しないまま分かれて来てしまっている。魔力を辿れば問題無く合流できるだろうが、あまり心配をかけるのも良くはない。

目の前の敵を手早く倒して、カルメと合流するとしよう。

地下にあるたくさんの牢。
空っぽの牢屋が続く。
・・・妙な空気が漂う。

・・・何だか嫌な予感がする。
静かな地下牢を探索する———

どこからかスズメの声が聞こえてくる・・・