【一揆参戦53日目】

一面に広がる紅い花園、だった地。
今は見渡す限りの荒野である。

今朝、無事にクリスさんと合流し、事態の中心である紅の魔神の元へ向かっている。
ファイちゃんも最終調整中であるが、夕刻には合流する手はずとなっている。
ここに向かう際に確認したが、続々と一揆衆もこの地に足を踏み入れており、魔神の居所が判明するのも時間の問題だろう。

53日、私の国の暦の上ではおおよそ1年の7分の1。もうこんなにも長く騒動が続いていたのか。
作物の種まきは充分にできたのだろうか。虫がついていたりしていないか。初日に村で見た赤ん坊はもう、つかまり立ちはした頃か。
厄介になっているあの人は取引を終えて家に戻ってきた頃だろうか。

この世界の終わりが目前に迫っているというのに、私は明日の、次の月の心配をしている。
おそらく他の一揆衆にも、似たような者は大勢いることであろう。
今いるこの地が好きだ。世話になっている人や愛する人がいる。
だから、それがなくなった未来なんて考えたくないし、あの時の私は、そして私達は命をかけたのだ。

今も同じときなのだ。
力不足は重々承知だ。
死ぬのは怖いし、同時に一人生き残った負い目も未だ胸の中にある。
だがそれ以上に、ここにいる人たちと未来を歩きたい。たとえ死ぬことになっても、その未来のために何かをなしたい。
矛盾なんて知ったことではない。一揆とは商売ではないし、勝負事でもないのだ。
かつての救世に対する敬意など、感じはしても考慮するほど繊細ではない。

一揆とはそんなものだ。矛盾も不敬も承知のうえで、無理を通そうとするものだ。
だからこそ人は立ち上がるのだし、大きなうねりとなって力となる。
私達は一人じゃない。だけど、一つだ。

　長い髪と衣を翻し、遠くを見つめる者の姿がある。