「やあ。元気そうだね。」
「……元気だけど毎日大変？うん、それもそうか。いつもがむしゃらだったもんな、あの頃。懐かしいなぁ」
「けど、その大変な日々に君は満足している。そうでしょう？
悩むこともあったけど、その世界にいたいと思ったのは君だから」
「……君は今、僕の見れなかった世界を見ている」
「僕の選ばなかった道を君は歩いているんだ。
君はそこに留まり、逃げ出さないことを選んだ。」
「どうか、その選択を大切にして欲しい。
掛け替えのないものは手放さないで。大事に持っていて。」
「なくしたものは戻ってこないから。失ってからでは遅いから。」
「まあ、君なら大丈夫だ。
君は自分で大切なものだと気づいたから。」
「……僕は君の未来を知らない。
だから無責任に未来は明るいとも、大丈夫とも言えはしない。」
「こんな風に言うのも、選ばなかった方の僕の、勝手な後悔と展望の押しつけかもしれないね。」
「それでも、迷いの果てに答えを出さなかったことは。
選ばなかったことは、いつまでも僕の後悔に残った。」
「だから、僕のできなかったことをする君が。
君の進む先が良いものになるように……僕は願っている。」

「良い旅を。もう一つの未来。」





…………。
……なんだか、今朝は妙に疲れが残ってるなぁ。
変な夢でも見たんだろうか……？

　　　　　　──人もをし　人も恨めし
　　　　　　　　　　　あぢき　　　なく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世を思ふ故に
　　　　　　　　もの　　　　　　思ふ身　　　は───

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた