また目が覚めた。
まだ、目が覚める。

「…そろそろ本当に歳かねえ。寝ても寝てもねみぃや」

ああ、声がでた。
まだ声がでる。

ぼんやりとした頭で、昨日あった雀の声を思い出した。

（おめめ　と　おみみ　と　おはな　いたい　とこ　ない　ですか？　いたいと　かなしい　の　ですよ？）

雀に最初に会ったのっていつだったっけか。
確かその頃はまだ俺も動けてたはず。

何かの呪いで言葉を発することができるようになったらしい。
発すると言っても、脳内に直接声が響く不思議仕様だけどな

だから俺がこんな状態になっても雀の声だけはちゃんと聞き取れた。
それが割かし嬉しかったのかもしれない

（すずめ　は　ちょっと　いたくても　かなしい　ですよ　ですよ・・）

たどたどしい言葉で懸命に心配してくれるなんてさ
…………やっぱちょっと嬉しかった、なんて。
口が裂けてもいわねーけど。

礼の代わりにその小さな頭を撫でてやった。
手を伸ばした時に違和感を感じだけどそれはなかった事にした。

力加減がわからなくて、ぎこちない撫で方になっちまって
ちっと照れくさかったな。

────“死”ってのはこういうもんだ

何でもない事の様に
それはまるで、今日は良い天気ですね、と話しかけるように
至極どうでもいい口調で雀に言った。

………そういや、直接誰かに俺が死ぬ、と宣言したのは
初めてだったような気がする。

カーフェイネスにも言っていなかった。
まあ何かしらアイツの事だから感づいてはいると思うが。

何で雀に言ったんだろう、って自分でも思ったが
よく考えれば簡単だった。

（"し"　って　なんですか？　おめめ　みえない　と　"し"　ですか？）

こいつや、動物や、鬼は、生きる事も死ぬ事も自然の摂理として捉えてるからだ。

飯食って、眠って、生きて生きて、生きて
そして死ぬ。

その流れに逆らわない命。

人間サマみてーに、泣いて悲しんで抗って
そして死ぬ。

死ぬ瞬間でさえも生きる事に執着しながら消えてく命

知ってるか？
前にさ、生きたまま臓物抉りだして
目玉もくりぬいて、舌も抜いてそれ食いながら
犯してたんだけど中々どうして、意外と息があった。
最後の最期まで痙攣してた。

あれって生きたい、生きていたいって現われだろ？

無様で滑稽だと心の底から思った。

今は、どうだろうな。
それが羨ましいとは思わねーけど
その命の欠片は綺麗だと思った。
砕け散った命の欠片が細氷みてーにキラキラしてた。

───────俺も人間だったらあんな感じなのかな。













「おはーよ、火流舞。いい子にしてたか？」

寝起きでぼんやり考え事するのも締りがねーし
いい加減起きるか。

立ち上がるにも難儀するこの体を叱咤しつつ
ゆっくりと火流舞に向かって右手を伸ばした

────伸ばしたつもりだった。

「あっれ右手、動いてなくね？？」

どうも、右肩から下の感覚が消え失せていて。
これはとうとう、右腕もげたか？と
左手で右腕を掴もうとするも、触ってんだか、ねーんだかもわからねえ。

「ええ……俺、今どういう状態なわけ…」

やだなあ、畏怖され、崇められてた
鬼神様のなれの果てがこれとか。

これからもっと惨めになんだろうな



はやく、