俺は、寒いのは苦じゃないが、暑いのはあまり得意ではない。
元々北方の山奥に住んでいたというのもあり、寒さにはわりと強いほうだ。
その代り、暑いというのはなかなか慣れない。
西のハッサレーのあたりは、見て回るのは面白いが、あまり長居はしたくない。
砂漠は夜になると気温が下がるから助かるけど。



今回はナスルに誘われて、『探し物』とやらの手伝いのために森へ行くことになった。
森は普通は暑くないはずだ。
俺の知る限り、暑い森なんて話は聞いたことは無い。
いや、南のほうに行けばあるみたいだけど。
とにかく、この森は暑くないはずだ。




なのに、なんでこんなに暑っ苦しいのよ。
ヘクターのエンブリオやナスル自身（？）が熱気を纏っているからですか。
そういえば、今回初めて顔を合わせたネイベールも炎を司るエンブリオを使役している……らしい。
戦いになればそれは分かるか。
いやその代り、戦いになったら今よりもっと暑くなるのか。


勘弁してくれ。





※お借りしました。
ENo.2398 ナスル＝アイン
ENo.71 　ヘクター・ブレイズバース
ENo.1840 ネイベール・フェリン

　目当てのものの気配はなかったようだが、
　ナスルは足取りも軽快に進み始めた。
　

指先に暗い炎が上がると、
小さな痛みと伴った熱と共に、手を僅かに引っ込める。

　ウルヘアというのがイヌワシの名前らしい。視線を逸らしながら小さく呟く。

　些か視線を落とした、けれども直ぐに彼を見遣る。

　と言う本人も、ちょっと嬉しそうである。
　が、先ほど呟いた同行の彼のエンブリオとのことが引っかかっているのか、何となく気まずげになる。ちらりと虚空を見遣る、と、風がひゅうと吹いた。
　エンブリオの気配に聡ければ、そこに何か居るのが分かるかもしれない。

　エンブリオについて、寧ろ彼の言うことに驚いたようで、目を瞬かせた。

　まずいってわけじゃないけどね、との言葉に少しほっとしたような表情を浮かべる。

　ところで、と神妙な面持ちでヴァルを見遣る。

　「それでは失礼」とナスルは纏う布をなびかせて、
　別方向へと静かに歩いて行く。
　

　傍から見てもとても機嫌がよさそうなナスルは、
　もののついでにきのこを摘みまくっていた。
　

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた