「お前の趣味は何だ」と聞かれたら、
「武器の手入れと、釣りと、昼寝だ」と答える。






「武器の手入れ」は、黙々と刃を磨いているだけでも楽しい。
日の光を受けて輝く刃を見ると、綺麗だなって思うし、研いで綺麗になった刃を見ると、達成感でちょっとうれしくなる。
ただ単に、武器を眺めているだけでも飽きない。刃の微妙なそり具合だとか、柄の装飾だとか、綺麗だなぁと思う。
やっぱいいよな！かっこよくて綺麗で！

でも、どんな武器であっても役目を果たすとすぐに、赤黒い錆にまみれてしまうのだが。



「釣り」と「昼寝」は暇があったらやるのがいい。
あのボーっとしてウトウトしながら過ごす時間がいい。すごくいい。
おかげで、釣りは良く魚に逃げられるんだが、待ってる時間が楽しいんだから、しょうがない。
たまには真剣に釣るのも楽しい。魚がかかった瞬間に、魚の動きを読むのは、戦う時に相手の動きを読む時と似ている気がする。
昼寝はなかなかする機会がないが、惰眠を貪るのがいい。
木陰で風や葉の音を聞きながら、ポカポカ陽気の中でウトウトするのはとてもいい。
気を張らなくていいし、とても幸せ気分。

ただ、どちらも敵がいなくて安全でいくらでも気を緩めていい時でないと満喫できないのが難点だけど。





傭兵なんて職業をやってはいるが、「殺し合い」はあまり好きじゃない。
「闘う」のは好きだが、あくまでお互いの技を競い合うから楽しいのであって、相手を殺すことが好きなわけじゃない。

いや、相手を打ち負かすのは好きっちゃ好きだけど。ほら、どんな勝負だって勝つと楽しいじゃん。あれと同じね。うん。
それに、殺し合いなんてのはお互いに次がないだろう？
それはあまり歓迎すべきことじゃない。
だから、俺は「殺し合い」は好きじゃない。



でも、たまに、極々たまにだけど、それも悪くないと思う時がある。

　この辺りの市にはあまり行ったことがない。ここのところ引きこもりっぱなしだったんどえ、足を運んでみれば良かったと若干後悔しつつ。見せられた一輪の花を観察する。

案内された宿の客室に入り、くるりと部屋を見渡す。
つかつかと備え付けの寝台やテーブルに歩み寄り、指を当てて沿わせたりしている。
…時折眉を顰めたり、小さくため息をついたりしている。
が、あなたの方へ振り返った時には何か不満のあるような様子は見せなかった。

そう言って懐から何かを取り出し、指で弾いてあなたの方に放った。
…純金製の、幾つかの宝石をあしらった指輪のようだ。
成功報酬とでも言うつもりなのだろう、気前がいいところを見せたかったのかもしれない。

一泊置いて、あなたの方に目を向けた。