銀の光が弧を描く。
１回、２回……。10回描いたところで、穂先を下した。




俺が毎度毎度、槍を振り回しているのを、ヴォルカンは毎度毎度、面白そうに見ている。飽きずに、横でフワフワしながら。
毎朝、人が準備運動しているところを見て、何が面白いのかね？


今度は構えを変える。右下から、上から、横から、後ろへ。
本当は誰か相手がいるといいんだけど、いないものはしょうがない。
ヴォルカンは相手をしてくれなさそうだし、シャグランは……相手をしてくれそうだけど、ちょっと怖いし。
一揆に参加してから、ほぼ毎日何かしら相手に槍を振り回しているんだから、まあいいか。




シャグランに頼んでみたところ、練習相手になってくれた。
……容赦なく剣を振り回してきたので超怖かった。

そう言うと荷を確認し始める。ヴァルの言葉を聞いたらその場を立ち去るだろう。

探偵なのに難題を量産するのか？

悪乗りがヒートアップしてきたようだ。

相槌を打っているかのようにみえるが、スズメは全く話についていけてなかった！

まともなことを言おうとしてもなぜか胡散臭く聞こえる、それが日蔭さんクオリティ。

伝えたかどうかも段々曖昧になってくるのであった。

あまり執着がなさそう、とヴァルの言葉に、特別気分を害した様子もなく。

逆に言えば、と声は乾いて。

使い方次第ではどんなものだって凶器にもなれば便利な道具にもなる。
やり方次第だろう、と青年は呟く。

随分と驚かれる様子に目を丸く。
自分達からすると当たり前の事である『世界間移動』も、彼には珍しいのか。
凄いと言われる程でもない、と頬を掻きつつ。