ゆらゆらと炎が揺れている。


薄暗い森の奥深くに、とても小さな祭壇がある。その左右には、同じく小さな松明。その小さな炎が、ゆらゆらと踊るように揺れている。
上を見上げると、密集した木々間からわずかに星空が見えた。

視線を炎へと戻した後、祭壇へと手に持った花を捧げる。誓いの言葉を述べ、手にしたナイフで指を薄く切り、流れ出た血を一滴、花へ。
炎のはぜる音がやけに耳につく。祭壇から一歩下がると、炎が先ほどよりも輝いているように見えた。ゆらゆらと踊りながら美しい小さな火の粉を撒いている。
俺は、ただ、あぁきれいだなと心の底から思った。




懐かしい夢を見た。

俺がまだ子どものころ、現在の相棒である精霊ヴォルカンと契約したころの夢だ。
あまりにも昔のことだが、あの松明の炎だけは今でもよく覚えてる。
村では皆があそこの祭壇で精霊と契約をするのだが、皆が炎の精霊と契約を交わすわけではない。風の精霊や、水の精霊。光の精霊や闇の精霊。人それぞれだ。どうやら、自分と一番相性のいい精霊と出会うことになるようだ。
だから、あそこの祭壇に行く時は皆必ず一人で行く。そして、あそこで目にした出来事は人それぞれに異なる……らしい。

俺の村で契約する精霊は、ほとんど目にすることができない。だから、契約する前は精霊といわれてもあまりピンとこなかった。ある程度の力（精霊との信頼関係を築くんだとか言ってた）を持つと目に見える形を取ることができるようになるのだが、そんなのは村では滅多に目にできる機会は無い。そういう人たちは「仕事」で大抵出かけている。
村で見ることができた精霊といったら、俺がヴォルカンと契約した後に、一度だけ村長の精霊を見たくらいだ。大きな鷲のような姿だったと思う。

とにかく、俺は相棒のことをはっきりとみることは今のところで来ていない。だからと言って今のところ不便と言うわけではないが。
時折、火の粉が舞ったり、なんとなく感覚で機嫌や存在をわかることはできる。契約した時、目に見えなくても「あぁ、こいつが俺の相棒か」と、思ったよりもすんなりと精霊という存在を感じることができた。ちょっと不思議な感覚かもしれない。



今日は、俺にしては少し長い日記になった気がする。
自分で言うのもなんだが珍しい。




追記
寝る少し前に炎の小さな竜を見た気がしたが、あれはなんだったのだろう。

そう言ってぬいぐるみは手を払おうとするが残念ながら手が届かない。

何回も同じ名称を繰り返す内にどうやらこんがらがってしまったらしい。

右手を差し出され、握手を交わそうと自分も右手を出そうとしたところに
かがめた今がチャンスと言わんばかりにぬいぐるみは青年に体当たりをしようとした。

ちまちま動くエンブリオ達は契約者の彼にとっては
どうにも邪魔くさいらしい…

　すでに飲食店で虫を食べる、という人間社会では割とタブーな事をやってしまった手前、トカゲには耳に痛い言葉だった。

土地の風習や常識を知りたいならば、その土地の者に聞く。道理である。

　少々礼を逸した発言をしてしまった。それについては謝りつつ、真似できないと肩を竦めてみせる。

　唸りつつ腕を組み、トカゲは考える。その所作から、見た目の割に頭でっかちな性分である事は伺えるだろう。

いきなり声を掛けられて、少々驚いた様子。

そういって自分の縫われた目を指で指し、触っている。

軽い冗談を言いながら。