「暑っちぃなァ……」
雲ひとつ無い空を見上げ、ため息をひとつ。



どこまでも広がる、青い空。
どこまでも広がる、荒れ果てた平野。

所々に、ぽつりぽつりと見られる岩や、葉の殆ど無い樹は
時折吹き荒ぶ熱風に削られ、乾いてしまったのだろう。
舞い上がる砂や埃が風に混じり、視界と体力を奪っていく。

先日まで居た、緑あふれる平原とは打って変わった此処へ
何故来る事になったのか……。


───


「居ないねー……」

ブランの影になる位置で、水筒に口を付けつつ
きょろきょろと周りを見回すディル。

「確かに、ココで見掛けたって聞いたんですけどぉ…；」

ディルの隣に居る、水の気配を纏う女性は
困ったように言うと、同じく水筒に口を付ける。


なんでも『荒れ地でドラゴンを見た』という話を何処かで聞いたらしく
はるばる探しに来たらしい。

その話を聞いて「ボクも見たい！」と、目を輝かせたのはディルだ。
特に行く宛も決まっていなかった為、同行する流れになったのだが
言い出しっぺは、暑さでぐんにゃりとへたばっている。

これ以上、無駄にうろつくのは色々な意味で危険だと思い
大きめの岩が並ぶ辺りで、一度休憩を挟む事にしたのだった。


───


「こんな所にドラゴン、ねぇ……」

もっとこう、森の中だとか山のてっぺんだとかに居るモンなんじゃないのか？
いやしかし、火山や雪原に棲む奴も居るらしいしな…
などと思いながら、休憩する二人を尻目に周囲を見回す。


ふと、熱でゆらめく景色の中に人影が見えた。

警戒しているのか、きょろきょろと辺りを見回しながら
慎重に足を進めている……が、どこからどう見ても目立っている。

砂漠に等しいこの場所で、何故黒い服を選んだのか…。

そう思っていると、その不審な人物とうっかり目が合ってしまった。
慌てふためく謎の人物は、何やら良く分からない事をまくし立て、そして。


その手に武器を構え、こちらへ向かって走り寄って来る。


「……おいおい、勘弁してくれよ…」

(気絶するまで笑顔で見守っている)

(しかし、気絶した後何をしたかは本人のみぞ知る——)