「レイさん！次はあっちなのだよー！」

ドーン、ドーンと花火が上がる中、レイとセシルは祭りの夜市に来ていた。
なんでも、メルンテーゼとは別の世界から伝わったお祭りのようで、
周りはこの祭りに合った衣装、ということで、浴衣や甚平、着物を来た人達でいっぱいだ。

自分たちもそれに合わせ、セシルは緑の甚平。
レイは特注品の紺色の浴衣を羽織る。

袖の所を切ってもらい、側面を切って裏にジッパーを仕込んだ、
翼の腕を通さずに着ることが出来る逸品だ。

セシルに羽根を引っ張られるまま、あちこちを周り、
りんご飴や綿飴に目をキラキラとさせるセシルに思わず笑みを零しながら、一緒に巡っていく。

雑踏の中では飛べないため、レイの鳥の足では歩みが遅い。
引っ張られ前のめりになるように、セシルの後をついていく。

周りに買った品をレイの魔力で浮かせつつ、食べながら、
傍から見たらカップルにも見えるような、そんなじゃれあいをしながら。

「これ？向こうで麦わら帽子のおじちゃんが売ってたのだー」

起きれば見知った宿のベッド。
隣をみれば心配そうに見つめる連れがいた。

起きましたか、と覗きこむ相手。
二人共ブランチマンにやられ、戻ってきたのだという。
レイも先ほど起きたのだと、一部始終を聞かされた。

“セシル！！”


思い出すのはあの時必死になって叫んだ彼の言葉。
本気で自分を心配していたのだと、気づいた。
小さく笑う。
相手には、自分はいつも笑顔の兎人、セシルなのだ。

振り向いた相手の腕を掴む。

気づいた相手は顔を赤らめて謝ってきた。
けど純粋に・・・

えへへ。自分でも照れくさい。
相手も照れてしまったのか翼で顔の下半分を隠して、いいですよ、と言った。

ドゥルアァァッ！！！


ブランチマンが叫びながら攻撃を振り下ろす。
その威力は・・・攻撃が向かう先は、飛びながら戦うレイには分かった。

叫ぶよりもブランチマンの攻撃が早かった。矛先はセシルだ。

癒しの歌を歌うレイに、一匹の小さなトカゲが近づく。
鮮血のような赤い一本の角を携えた真っ黒なそのトカゲは、レイを見上げる。

随分と上から目線だが、どうやら契約してくれるようだ。

そんなことで良いのだろうか、と思いつつも、レイはにっこりと笑みを浮かべ。

随分と安直な名付けだが、新しい仲間が増えた。